18日朝、未接種だった予防接種を受けに近くの保健所に行った。年末に受けられたのだが、術後6カ月を待ち、献血を済ませてから接種を受けた。その際、予防接種ワクチンの緊急使用が承認された事をニュースで聞いた70代位のブラジル人男性が、保健所の職員に切実そうな表情で「コロナの予防接種はいつからだ」と訊ねているのを見て胸が痛んだ。
ブラジルだけで21人万超の人命を奪い、今も第1波以上の速度で広がるコロナ禍に、恐れや戸惑いを覚えている人は多い。だが、米国やブラジルでの感染拡大や死者の増加は、政治的な対立により、国ぐるみの総合対策が採られなかったからだ。
この事は新年号や普段の記事でも折に触れて書いてきた。19日には、欧州の研究者が欧州19カ国153地区で、政治的な対立の度合いと新型コロナによる死者数の相関関係を分析した結果、政治的な対立が激しい地区の死亡率は対立のない地区の5倍以上だったとの報道もあった。
対立が激しいと、適切な対策策定が難しくなる、企業家などの声が優先順位決定に影響を与える、政治家が大衆主義に走り、専門家の声に耳を傾けなくなると、その研究者達は指摘している。
これらの特徴はブラジルの新型コロナ対策でも顕著で、ボルソナロ大統領がマスク着用拒否、デモ挑発など、保健相や知事の姿勢に逆行する態度をとった。大統領がコロナ禍の深刻さを否定する度に、大統領支持者の多い地域では感染拡大や死者増加が起きたし、全国的な予防接種開始の遅れも発生した。
承認されたワクチン2種の原材料や完成品のコロナバックは中国から輸入されるため、予防接種継続には大統領が中国に対する姿勢を変える事が不可欠だ。「中国製ワクチンを使うのか」と支持者に訊かれ、コロナバック購入契約を反故にさせた大統領が、今回は素直に忠告に従うかが今後の動向を決める。(み)