トイレットペーパーやペーパータオル、紙ナプキンといった衛生用の紙製品が値上げされる可能性が出ている。セルロースなどの原材料が二桁台の値上がりを記録し、製紙会社が驚いているからだが、スーパーなどは値上げに反対している。
製紙会社の組合は品不足が起きる可能性を否定しているが、生産コストが大幅に上昇しているのに販売価格がそれに見合う形で上がらなければ、収支バランスが崩れてしまう。もう既に、倒産や小規模な会社の合併吸収などが起こり得ると案ずる声は出ているようだ。
ブラジル衛生品・香水・化粧品協会(Abihpec)によると、トイレットペーパーその他の衛生用の紙製品を生産するための原材料は今年、例年にないペースで値上がりしている。値上がりが目立つ原材料にはセルロースや白と茶色の紙の屑、包装用プラスチックや段ボール紙、電気代、液化ガスの料金などが含まれる。セルロースなどの値上がりは、ドル価が20%以上上昇した事と関係がある。
トイレットペーパーやペーパータオルの芯に使うマクラチュラ紙は品不足で、ここ数カ月間で40%も値上がりしたという。マクラチュラ紙は段ボール紙を砕いて作るため、ショッピングセンターなどの商店が閉まっていると、原材料の段ボールの回収が困難になり、品不足が起きるのだという。
同様の問題は、再生紙で作り、より安価なトイレットペーパーの原料となる白い紙の屑でも起きている。
包装用のプラスチックの値上がりは、為替や国際的な原油価格の動向、新型コロナのパンデミックを抑制するための社会的な距離確保のために、工場が長時間閉鎖されていた事などが関係している。工場閉鎖で需給バランスが崩れ、高値で買い取ってくれる会社に売る事で、価格がさらに上昇するという悪循環が起きているのだという。
だが、今のところ大幅な値上がりが起きていないのは、スーパーなどの小売店が生産コストの上昇分を消費者価格に転嫁する事を拒んでいるからだ。11月までの広範囲消費者物価指数(IPCA)で見ると、トイレットペーパーは3・24%値上がりしているが、ペーパータオルは7・32%値下がりしている。
Abihpecによると、紙の屑は1~11月に26~31%、液化ガスは10月だけで3・5%、段ボール紙などの包装用品は約10%、滑らかなプラスチックフィルムは11・5%、マクラチュラ紙は7・5%のように多くの原材料が値上がりしているが、スーパーなどへの販売価格は抑えられており、原材料の値上がり分をカバーできていないという。
製紙業界によれば、小売業界の活動は既にコロナ禍前の水準に戻っており、1~10月の販売実績は19年同期を6%上回っているが、消費者の購買力が落ちているために需要が落ち込む事を怖れ、販売価格引き上げを拒んでいるのだという。
製紙業界や統計会社では、3月頃にはドル高による圧力軽減でセルロース価格安定化といった動きも出始めると見ているが、製紙各社が持ちこたえられるか、統廃合がどこまで進むかといった不安要素も残っているという。(12月27日付G1サイトより)