1月中の新型コロナウイルスのワクチン接種を開始すべく、それぞれのワクチンに関する動きが活発化しはじめている。2〜4日付現地紙、サイトが報じている。
コロナウイルスのワクチンは、保健省も1月からの接種開始を視野に置いているにもかかわらず、2020年の内に国家衛生監督庁(ANVISA)への緊急使用申請や正式登録の申請を完了したものがないなど、接種開始の遅れが不安視されてきた。だが、この年末年始で具体的な動きが出始めている。
まず保健省が最優先している、イギリスのオッフクフォード大学とアストラゼネカ社が開発する通称「オックスフォード・ワクチン」に関して、12月31日、オズワルド・クルス財団(Fiocruz)がANVISAに対し、同ワクチン200万回分を輸入するための特別許可を求めた。ANVISAは2日、Fiocruzの依頼を承認したことを正式発表した。
これを受けFiocruzは3日、インドのセーラム研究所が生産しているオックスフォード・ワクチン200万回分を購入すると発表した。Fiocruzは同時に今後の予定も発表したが、それによると15日までにANVISAへの登録申請を行い、最初の100万回分を2月8日から12日の間に国内の保健機関に流通させたいとしている。
サンパウロ州政府が今月25日からの州内での接種開始を宣言している中国シノバック社の「コロナバック」については、ジャン・ゴリンクテイン聖州保健局長がは4日、「向こう48時間以内、遅くとも今週中に、ANVISAに対して、ワクチンの緊急使用申請と登録申請を行う予定だ」と発表した。
同ワクチンは12月23日に治験の最終結果の発表を行う予定だったが、間際になって延期となり、不安を持たれていた。ブラジルでの治験を統括し、技術移転後の生産も担当するサンパウロ市ブタンタン研究所は、「治験結果は世界保健機構(WHO)の求める基準を満たしているので心配していない」という。
一方、保健省が主に都市部でのワクチンに使いたいと考えている米国のファイザー製薬のワクチンも、ANVISAの承認まで時間がかからないであろうとの見方が広まっている。ファイザー製薬は12月28日、ANVISAが同社に求めていた「3千人のブラジル人ボランティアの治験」に難色を示し、「ブラジルにワクチン申請は行わない」との発表を行っていたが、12月30日にはこれを撤回し、緊急使用申請を行う意向を表明した。
これに加え、WHOがファイザー製をコロナ・ワクチンとしてはじめて公式に認めたことや、同ワクチンの使用を公認する国が増えていることもANVISAへの圧力となるだろうとの見方が広がっている。
さらに、ブラジル・ワクチン・クリニック協会(ABCVAC)が3日、インドのバラット・バイオテック社との間で同社のワクチン500万回分を購入すべく、交渉していることを明らかにした。同ワクチンの存在はこれまでブラジルではあまり知られていなかったが、インドでは3日に同ワクチンの緊急使用が認められている。
ただし、インド政府は4日、国内供給分のワクチンを確保できるまでは、国内で生産したアストロゼネカ社のワクチン輸出を禁ずる方針を打ち出しており、Fiocruzの購入計画が挫折する可能性が出ている。