ボルソナロ大統領が連邦予算法(LDO)に盛り込まれた、新型コロナ対策や予防接種ワクチンの購入・生産のための経費凍結を避けるための項目に拒否権を行使し、12月31日付連邦官報に掲載したと1~2日付現地紙、サイトが報じた。
LDOは予算案行使のための基本的な基準を定めたもので、今年度予算の詳細を規定する年間予算法(LOA)承認までの間も政府が予算を動かせるよう、取り急ぎ、連邦議会が承認した。LOAは連邦議会再開後に審議される予定だ。
大統領が拒否権を行使したのは、コロナ禍抑制のために必要な諸対策と予防接種ワクチンの購入や生産のために必要な経費支出には暫定令使用を認める項目や、気候変動対策プログラムに関する項目などだ。
大統領は新型コロナの感染再拡大で自治体が外出規制を強化したりする最中も、「パンデミックは終息間近」と発言し、世界保健機関などから認識違いを指摘された。ゲデス経済相も第3四半期の国内総生産(GDP)が7・7%成長と発表された時、緊急支援金支給などを続ける理由は消滅と発言。予防接種ワクチン購入予算は確保したから、それ以外のパンデミック対策は打ち切るとも通達した。
だが、感染再拡大は否定し難く、感染学上の53週(12月27日~1月2日)も、新規感染者は前週を僅かに下回る25万599人だったが、死者は11・1%増の4930人で、1日に1千人超の日も3日あった。
感染再拡大を受け、サンパウロ州は1~3日の外出規制を赤レベルにしたし、アマゾナス州では15日間赤レベルにして、裁判沙汰も起きた。リオ州やアマゾナス州など、病床不足が深刻で医療崩壊が起きている州や市では私立病院の病床もコロナ患者用にあて始めている。
そんな中、コロナ対策や予防接種ワクチン確保のための資金凍結を回避する項目に拒否権を行使した事は、現政権の姿勢への批判や疑問を生じさせた。
また、気候変動関連のプログラムに関する拒否権行使や、装甲車購入などの軍関連経費の節減禁止を定めた項目をそのままにした事も、現政権の姿勢を物語る。米国で新政権が発足したら、気候変動への取り組みはこれまで以上に厳しい目で見られる事が必至だ。
大統領は拒否権行使の理由として、行政府の公共政策の有効性を制限するし、議会の意向で発生する経費が増えるとした。
だが、今年度も、昨年までに実施されたが支払が遅れている事業や昨年行う予定だったが今年実施する事業の経費や、コロナ禍による景気回復の遅れによる税収減などに相当する分の予算凍結の必要が生じる事は明白だ。
ゲデス経済相らは経済活動の本格化は予防接種次第というが、一斉接種終了には1年以上かかる上、ワクチン生産や接種に不可欠な注射器や針、輸送費なども含めた経費が確保できなければ経済活動の本格化も遅れる。
非常事態宣言期間終了に伴い、事前承認を受けてないコロナ対策費には枠がはめられるため、大統領拒否権を議会が拒否する可能性は高い。