4日、労働者党(PT)が党内投票を行った結果、2月1日に行われる下院議長選で、ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)の推すバレイア・ロッシ下議(民主運動・MDB)に投票することを決めた。ボルソナロ大統領の推すアルトゥール・リラ氏(進歩党・PP)との争いは緊迫したものとなっている。5日付現地紙が報じている。
今回の下院議長選の争点は、リラ氏選出をいかにして食い止めるかの一点に絞られている。コロナウイルス対策や環境問題などに関して、連邦議会はこれまで何度もボルソナロ大統領の意向に反する法案を通してきた。大統領が、世論と正反対の主張を展開し、人道的な権利や憲法上の権利すら軽視することがあったからだ。
ボルソナロ氏やその支持者は昨年、「反連邦議会・反最高裁」のデモを煽り、参加するなど、民主主義の原則である「三権分立」を遵守する意思があるのかが疑問視されている。
そうしたこともあり、今回の下院議長選では左派政党が次々と、中道右派のマイア議長に協力姿勢を示すという異例の傾向が目立っていた。PT党首のグレイシ・ホフマン下議も、「民主主義と連邦議会の独立性、国民の基本的な権利を守るための立法議題が脅かされないため」として、マイア議長への支持を表明していた。
だが、ロッシ氏のMDBが、副大統領でありながら2016年にジウマ元大統領(PT)を罷免に追いやったテメル氏の政党であること、さらに、マイア氏がジウマ氏の罷免に賛成票を投じていたことから、PT党内で反対の声が強かった。反対派のPT下議たちは「少なくとも一次投票ではロッシ氏に投票しない」と主張し、「一次投票ではPT独自の候補を」と訴えていた。
4日の党内下議投票でも、意見は割れた。だが27対23の僅差ながら、「ロッシ氏に投票」が上回り、党としての方針を決めた。
ロッシ氏に対しては、既にDEMやMDBのほか、民主社会党(PSDB)、シダダニア、緑の党(PV)、民主労働党(PDT)、ブラジル社会党(PSB)、社会自由党(PSL)、レデ、ブラジル共産党(PCdoB)の10党が支持表明していた。これに最大政党のPTが加わることになった。
仮にPTの54票が全て入り、その他の党で裏切りがない場合は、263票で過半数の256票を上回る。だが大統領の前党PSLには、少なからず大統領派が存在する。
一方のリラ氏には中道勢力セントロン系政党を中心に、195票が予想されている。支持表明をしていないブラジル労働党(PTB)も支持が確実視されているため、200票は超える見込みだ。
票の行方が見えていないのは、社会主義自由党(PSOL)、ポデモス、ノーヴォのみとなっている。
下院議長選は誰に投票したか分からない秘密投票になる。リラ氏としては、党としてはロッシ氏支持を表明した政党の内、PSL、PSDB、PSBの造反者が合意を裏切り、自分に投票してくれることに期待しているという。リラ氏にはボルソナロ派だけでなく、同氏出身の北東部の議員からも支持がある。