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《ブラジル》大統領が新年早々「国は破綻して修復不能」と問題発言=翌日に「やっぱり素晴らしい国」と撤回

12月のボルソナロ氏(Marco Correa)

 ボルソナロ大統領は5日、「ブラジルは破綻している。自分ではどうすることもできない」(O Brasil está quebrado. Eu não consigo fazer nada)」と、大統領でありながら国の統治を放棄するかのような発言を行って強い反発を受け、翌6日には「素晴らしい国」と撤回した。5、6日付現地紙、サイトが報じている。
 この発言は5日朝、ボルソナロ氏が今年初めての大統領府での公務につくために大統領官邸を出て行く際、集まった支持者たちと話していて出たものだ。
 支持者のひとりとの雑談で、大統領は「ブラジルは破綻している。自分ではどうすることもできない」と語った。
 続けて「所得税改革を行いたいんだが、コロナウイルスのおかげで、何もできない。コロナウイルスの影響はメディアによって誇張されている。何の資格もないメディアにな」と当てこすり、自分が行いたい改革ができないとぼやいた。
 所得税の改革は大統領が選挙キャンペーンのときから掲げていたもの。所得税率や課税額は2017年以来改正が行われておらず、インフレ分を加味すると、実質的な増税となっている。前回2017年の改正では、所得税免除の限度が月収1903・98レアルまでとなっていたが、1996年から2017年までの所得税の課税率などを見ると、この間に生じたインフレ率と、所得面税額の調整率との差は、88・40%にも上っている。
 そのためボルソナロ氏は2019年12月2月にも「免税基準を月収2千レアル近くに引きあげたい」と主張していた。

 だが、5日の破綻発言は、政界や財界に大きな波紋を広げた。ロドリゴ・マイア下院議長はブログで「深刻かつ無力な発言だ。向こう2年間、大統領のプロジェクトが理解できないまま過ごさなくてはならなくなるのだから。2019年の年末以降、パンデミックのときも、大統領の発言は、国を統治する大統領というよりは、1議員としての発言に近い」として、計画性のなさや視野の狭さを批判した。
 マイア氏は続けて、「第一にブラジルは破綻なぞしていない。第二に国としてのプロジェクトを打ち出すだけの計画性のない連邦政府に、国の問題は解決できない」と強く主張した。
 18年の大統領選でボルソナロ氏と争ったシロ・ゴメス氏は、「大統領への提言」として、「歳出上限を取っ払って、コロナワクチンの計画をしっかり立てること」をあげ、「それができないのなら辞任すべきだ」と厳しく批判した。
 ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事も「サンパウロ州は破綻などしていないし、解決する方法だってある」と語り、大統領を皮肉った。
 かねてからボルソナロ氏への批判的発言で知られるジャーナリストのレイナルド・アゼヴェド氏は「ブラジルが破綻していて何もできないだと。できるに決まっているじゃないか。やめてしまえ、この無能」と罵倒し、この日もっとも話題を呼んだツイートとなった。
 大統領の発言は、「ブラジルの経済はV字型の回復を示している」などの表現で、経済活動の回復を強調して来た経済スタッフとも真っ向から対立し、冷や水を浴びせるものになった。5日は経済界からも外国人投資家たちが大統領発言をどのように受け止めるかを案ずる声が相次いだ。
 この発言が予想外の物議を醸したことで、大統領は6日に一転して「ブラジルは素晴らしい国だ(uma maravilha)」と発言。この日、大統領は休暇中だったパウロ・ゲデス経済相などを呼び、緊急で閣僚会議を開いた。