中国が新型コロナウイルスの存在を世界保健機関に通達したのは一昨年の12月31日。ウイルスの形状や症状が2002年に流行したSarsに似ているため、9日後にはSars―CoV―2という名前が付いた。この迅速さは科学が日々進歩している証拠だ。
新型コロナのワクチン開発中は、「こんなに短期間で安全なワクチン製造は不可能」と訴えるビデオが出回り、接種拒否を叫ぶ人も現れたが、短期間でのワクチン開発はこれまでの積み重ねの賜物だ。
ファイザー社やモデルナ社が応用した伝令リボ核酸(mRNA)は1960年に発見されたもの。周囲から冷たい目で見られながらも研究を続けた科学者のおかげで、不安定さや過剰な炎症反応を抑制する方法が開発されてきた。
モデルナ社とファイザー社の共同開発者のビオテック社がmRNAに関心を示したのは2010年。癌治療への適用を試みていたビオテックは、2013年に発見者を同社の開発スタッフに迎えた。
60年間温めてきた研究結果を新型コロナのワクチン開発に活かせた科学者は「新型コロナが終息したら成功を祝える」と語っているが、多額の投資と長年の研究が新しい方法でのワクチン開発を可能にしたのだ。
オックスフォード大学のワクチンは2012年に流行したMERSやエボラ熱の研究結果に、天然痘の予防接種で利用した、動物を感染させて得た弱めのウイルスを接種する技術を応用。
中国が開発したコロナバックはSarsの研究と流行感冒用のワクチン製造に使う不活性化したウイルスを利用。伝統的な方法二つは安全性が高いが、有効率はmRNA型より低い。
短期間でのワクチン開発は、積み重ねてきた知識や技術、多くの命を救うために奔走した人達の努力の結果だ。世界的な流行のせいで、より広範囲での治験ができた事は皮肉だが、1日も早いパンデミックの終息を願いたい。 (み)
タグ:コロナ