この度、外務大臣としてブラジルを訪問することができて大変喜ばしく思っています。外務大臣としては初の訪問ですが、私個人としては4回目の訪問であり、ブラジルに対して非常に親しみを感じています。新型コロナの感染が世界的に拡大していますが、伝統的友好国であるブラジルとの関係を強化したいとの強い思いで、今回の訪問を決めました。
中南米を含む国際社会におけるパワーバランスの変化が加速化・複雑化している中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化は益々重要となっており、そのために国際的な連携が必要となっています。多くの中南米諸国は、法の支配、自由、民主主義、人権等の基本的価値を我が国と共有しています。
なかでも、地域を代表する大国であるブラジルは、基本的価値と日系人の方々が紡いできた伝統的な絆を共有しており、こうした国際的な連携を進める上での「戦略的グローバルパートナー」であり、その関係強化の重要性は近年大きく増大しています。また、日本は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化に向けた戦略的な連携を、米国等と重層的に進めていますが、新しい外交を進めるブラジルともこうした重層的な連携を進めるべく、日米伯三か国の協議を立ち上げたところです。
また、日本政府は、ブラジルの感染症対策及び保健・医療体制の強化に資する機材供与を実施しています。PAHO(汎米保健機構)を通じた、ブラジルを含む中南米各国への支援も行っています。日系人の皆様や企業の皆様におかれては、ブラジル各地で市民の方々が困難に直面する中、自身も困難に直面しているにもかかわらず、医療機材や食料の寄贈などを通じて、地元社会に貢献されたと承知しております。
さらに昨年は、オンライン・ツールも活用しつつ、多くの日系イベントを実施されたと承知しております。これらの活動は、日系人社会の積極的な現地社会への貢献として、大変意義深く、日本人として誇りに思います。こうした活動を後押しする観点から、日本政府として、新型コロナによる影響を受けた日系人団体が運営する医療・福祉施設や日系人団体が行う感染拡大防止等の事業に対して支援を行うことを決定しました。この支援が日系人の皆様のお役に立つとともに、皆様の活動の強化に貢献することを通じてブラジルの発展にも資するものとなることを期待します。
2016年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの成功とブラジル選手の目覚ましい活躍は記憶に新しいところです。現在、日本は、人類がウイルスに打ち勝った証、また、東日本大震災からの復興を発信する「復興オリンピック・パラリンピック」として、東京大会の開催実現のため準備に取り組んでおります。スポーツ大国でもあるブラジルからも多くの選手が参加することになるでしょう。そうしたスポーツを通じた人的交流によって、両国国民が、地理的な距離を感じない程互いに身近に感じられる存在になることを祈念しています。
6世代、200万人以上に及ぶブラジル日系人社会は、日ブラジル両国を繋ぐかけがえのない宝です。ブラジル社会の津々浦々で活躍され、祖国日本と日系社会の絆を大切に守り育てていらっしゃる日系社会の皆様に改めて敬意と感謝の意を表明したいと思います。引き続き日本政府としても、日ブラジル関係を支える信頼の礎であるブラジル日系社会と、さらに連携・協力していきたいと思います。
日本国外務大臣 茂木敏充