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《記者コラム》医療崩壊中のリオで500人のパーティを開こうとしたネイマールの品格

ネイマールとフラヴィオ氏(Instagram)

ネイマールとフラヴィオ氏(Instagram)

 「本当に何歳になっても成長しないな」。年末年始のネイマールの行動を見るにつけ、そう思わざるを得なかった。
 ネイマールは2020年の年越しパーティを、医療崩壊中のリオのコンドミニオ(隔離された高級住宅地)で100人以上の招待客を呼んで行った。コロナ禍が世界中で恐れられている中、この人数だけでも呆れるが、当初の予定では500人ほど呼ぶつもりだったというから、開いた口が塞がらない。
 このパーティの件でさんざん叩かれたネイマール。その騒動の余韻が残る1月3日、今度はボルソナロ大統領長男のフラヴィオ上議と一緒に写真に写り、それを自身のインスタグラムにあげた。
 フラヴィオ氏といえば、昨年の国内ニュースでもっとも報じられたことのひとつ、“ラシャジーニャ疑惑”の渦中の人物で捜査を受けている真っ最中。「大統領は支持してもフラヴィオ氏は許せない」とする人も少なくない中でのこの行為。
 これには彼のファンの中でも「ネイマールをキャンセル(ツイッターなどのフォローをやめる)しよう」との大きな動きが起こったほどだ。
 それにしてもネイマールは成長しない。彼が17〜18歳の若さで一躍、「セレソンの次代のエース」と騒がれたときから、髪型をはじめとしたオシャレ好きなところや芸能人などとの派手な遊びっぷりは批判の対象となっていた。
 だが、そのときから「遊んでも試合で結果を出してくれればそれでいい」という世間の風潮があった。
 そうした寛容な後押しに応えるかのように、彼は試合になると結果を残し続けた。「火事場の馬鹿力」なのかどうかはよくわからないが、以前からマスコミからの批判が高くなれば高くなるほど結果を残し続けた。その結果、FIFA世界最優秀選手賞で第3位を2回とるほどの大物選手にはなった。
 だが、そこまでの選手になったならば、それにふさわしい「品格」が求められるもの。クリスチアーノ・ロナウドはそうした世間からの声に応えるように、チャリティや献血活動に熱心で、コロナウイルスに対しても積極的な「ステイ・ホーム」を呼びかけるなどして、その人格者ぶりを評価する声が高まっている。
 ところがネイマールからは、そうした品格面での評価というものが全く聞こえてこない。政治的趣向性が保守的なことは伯国サッカー選手に伝統的に目立つことではあるが、ネイマールから社会的なことでの意見が聞こえてくるのは、せいぜい黒人選手に対しての共感程度のもの。
 いつまでたっても「遊んでもゲームで結果を出せばいいだろ」の繰り返しのまま。今回の年末年始の騒動でも世論は全く耳に入っている感じはしない。
 このままではサッカー選手を終えたあとの彼の人生が気になるところだ。もっとも、引退後の人生が破綻したとしてもマラドーナは常に「弱者の味方」のイメージで愛され続けたものだが、ネイマールはどうなるか。(陽)