12日にサンパウロ市ブタンタン研究所から「最終的な有効率は50・38%」と発表されたコロナウイルスのワクチン「コロナバック」は、ボルソナロ大統領支持者はもちろん一部の医療関係者からも疑問の声が上がっていたが、専門家らが肯定的な評価を繰り返しコメントする中で落ち着きを取り戻し始めている。17日には国家衛生監督庁(ANVISA)がコロナバックを含むワクチンの緊急使用に関する会議を行う。12、13日付現地紙、サイトが報じている。
コロナバックに関しては、昨年12月23日の治験結果発表が直前でキャンセルされたことや、7日の発表では有効率78%としていたのに、12日の発表では50・38%に低下したことで、信頼性を懸念する声も出ていた。
とりわけ、コロナバックを推進するジョアン・ドリア・サンパウロ州知事と敵対するボルソナロ大統領やその支持者は批判的だ。大統領は12日、コロナバックの効用結果を聞くと、「50%というのは良い数字なのか?」と訊いて皮肉った。50%というのは、世界保健機関(WHO)が予防接種ワクチンとして認可するために求めている最低限の数字だ。
ネット上でもボルソナロ大統領支持者が、「次にテストを行えば30%だ」「今度はドリアの支持率くらいに低くなるぞ」と皮肉った。
メディアでも、ロイターが「がっかりだ」、ウォール・ストリート・ジャーナルが「他と比べて低い」などの懸念を示した。
だが、今回発表された有効率について報じる現地メディアのニュースや、SNSなどでは国民から好意的な反応が多く出ていた。その理由としては、ブタンタン研究所が感染の段階別に効用を発表した結果、「重症化や入院を必要とする中程度以上の感染に対しては100%有効」ということが示せたこと、「効用95%」と発表している米国ファイザー製薬が省いたごく軽症の感染者のデータまで発表したのが良心的だと解釈されたこと、治験参加者が全員、最前線で働く医療関係者だったのに、死者や重症者が出なかったことなどが評価されていた。
また、昨年のサンパウロ市市長選次点のギリェルメ・ボウロス氏、サンパウロ州選出下議のサミア・ボムフィン氏(共に社会主義自由党・PSOL)など、SNSに多くのフォロワーを持つ反ドリア派の政治家たちも、今回の結果を好意的に評価し、「まずはコロナバックを接種して死者を減らそう」とのメッセージを発して話題となっていた。
米国ハーヴァード大学や英国オックスフォード大学の医学関係者も、「効用50%のワクチンを95%の人々に接種する方が、効用が95%でも10%の人にしか接種しない場合より効果がある」との見解を発している。
ANVISAは17日に、コロナバックと、オズワルド・クルス財団(Fiocruz)が進めているオックスフォード・ワクチンの二つのワクチンの緊急使用に関する会議を行う予定だ。
保健省は19日に全国の知事たちとの会議を行うことが予想されている。パズエロ保健相は13日、Fiocruzが要請し、2日にANVISAからの購入許可が出たオックスフォード・ワクチン200万回分を受け取るための飛行機が同日発つと発言。一部報道では、19日の知事との会議に合わせ、大統領官邸で予防接種キャンペーンの最初のイベントが行われるのではないかと見られている。