6日、米国のワシントンDCの連邦議会議事堂がトランプ大統領支持者によって占拠された事件は全世界に衝撃を与えた。それと共に話題となったのが「陰謀論者」と呼ばれる人たち。
実際に議事堂へ突入を企てたり、選挙終了後2カ月かけても選挙結果を何一つ覆せなかったにもかかわらず、トランプ氏の唱える「バイデン氏の不正」を信じて疑っていなかった人たちだ。
こういう人たちは米国のみならず世界中に存在するが、それがとりわけ日本人に多いことがコラム子の注意を引いた。
彼ら日本人の陰謀論者は、本国の陰謀論者同様に「Qアノン」や大紀元時報などが唱える陰謀論を信じ、大手メディアからファクトチェックされフェイクニュースとされたものを「不正の証拠」として騒ぎ立てている。
その勢いは議事堂占拠事件後もあまり変わっていない。その事件の数日後には、彼らの唱える陰謀論が日本のツイッター・トレンドのベストテンに3つも入る事態が起きていた。
では、そのとき、ブラジルはどうだったか。もしかしたら、「そりゃ、トランプ氏を慕うボルソナロ大統領の国だから当然盛り上がったであろう」と思う人もいるかもしれない。だが、その答えは「全くの不発」。
11月7日のバイデン氏の当確から今日に至るまで、国内で陰謀論が大きな話題になることはない。ツイッターやフェイスブックのニュースなどにトランプ支持者が食ってかかるような光景もない。ましてや日本で起こったようなトランプ支持者のデモ行進なども起こっていない。
では、なぜブラジルがこのような感じなのか。コラム子なりに分析してみた。まず第一に、ブラジル人がトランプ氏にそれほど興味がないこと。「あくまで興味があるのは国内政治で、国外のことは関係ない」といったところか。
第二に、ボルソナロ大統領自身がこの件であまり騒がなかったこと。本来、最も陰謀論をまくしたてそうな印象もあるボルソナロ氏だが、さすがに一国の大統領として「他国の選挙に首をつっこむ」行為は連邦政府内で釘を刺されたか。ときたま「あの国の大統領選では不正があったようだな」と言うにとどまったことで支持者を焚きつけるには至らなかった。
そして第三に、昨年6月からのフェイクニュース捜査。これが最も大きかっただろうと思う。ボルソナロ氏のネット上での支持を支えてきた大統領次男のカルロス氏、三男エドゥアルド下議を筆頭とした大統領前所属党の社会自由党の下院部隊、サイト「テルサ・リーヴリ」などが一斉捜査にあったことで世間からの信用度がガタ落ちになった。
さらに最高裁や連邦警察などの目が厳しくなったために、根拠のない情報が流しにくくもなった。そうなってしまうと、もう自分たちのことだけで精一杯で、米国の選挙まで応援できる余裕が彼らになくなってしまっていた。そういうことではないだろうか。
そうしたブラジルでの状況ゆえ、日本からの情報には随分驚かされる。(陽)