ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》サンパウロ市で17日ワクチン接種開始=許可出るも中国製のみ調達済=英国製届かず大統領面目丸つぶれ

《ブラジル》サンパウロ市で17日ワクチン接種開始=許可出るも中国製のみ調達済=英国製届かず大統領面目丸つぶれ

サンパウロ州で接種開始(GovSP)

 国家衛生監督庁(ANVISA)は17日、コロナウイルスのワクチンとして緊急使用願いが出されていた「コロナバック」「オックスフォード・ワクチン」の二つを満場一致で承認した。25日からコロナバックの接種開始とかねてから発表していたサンパウロ州では、17日の内にさっそく前倒し接種を開始。各州へのワクチン配布は18日に行われ、同日夕方から接種キャンペーンも始まった。18日付現地紙、サイトが報じている。
 17日の審査は午前10時に始まった。理事たちによる審査は各部門の担当者からの報告を受けて行われたが、事前の分析結果を報告した医薬品及び生物製品ジェネラルマネージャーのグスターヴォ・メンデス氏は、コロナバックに関して「免疫学上、数字的に物足りないところがある」とし、内容を補完する内容の書類提出を求めながらも、「ブラジルでの必要性の高さ」という観点から、コロナバック、オックスフォードの両ワクチンの使用を勧めた。
 審査は、メンデス氏らの報告を受け、ANVISAの5人の理事が多数決で決める方式だったが、アントニオ・バーラ・トーレス理事長をはじめ全員が賛成、満場一致での承認となった。
 コロナバックはすでにインドネシアやトルコなど、オックスフォードはイギリスやインドなどで接種がはじまっていた。
 このANVISAの決定は同時に、サンパウロ市ブタンタン研究所でのコロナバックの治験と国内生産を全面的にバックアップしてきたジョアン・ドリア・サンパウロ州知事のボルソナロ大統領への勝利を意味するとの報道が目立った。
 両者の間のワクチン抗争は、昨年10月に保健省が、コロナバックの全国への支給計画でブタンタン研究所との合意を発表するところまでこぎつけたのに、その翌日、大統領に一方的に合意を反故にされたという経緯で表面化。大統領は中国を嫌悪しており、次期大統領選への出馬が有力視されているドリア氏へのライバル意識、中国を嫌う支持者への媚がこのような行動をとらせたと見られている。

17日のANVISAでの審査の様子(ANVISA)

 ボルソナロ氏はかねてから、コロナ治療薬としての効用が証明されていないクロロキンの服用を推奨。ワクチンに対して懐疑的な発言を繰り返している。昨年12月には、すでに国際的に接種が行われ始めていた米国ファイザー製薬のワクチンに関しても、「あのワクチンを打ってワニになっても君たちの責任だ」と発言し、問題になっていた。
 酸素ボンベが欠乏して患者が窒息死する事態まで生じたアマゾナス州マナウス市での医療崩壊で、現政権への批判の声が出ている最中に、自身が選んだANVISAの理事たちが全員でコロナバックを承認したことで、大統領はワクチン抗争での敗北に追い打ちをかけられた格好だ。
 承認の報告を受け、サンパウロ市では早速、ワクチンの接種がはじめられた。エミリオ・リーバス病院勤務の黒人女性看護師のモニカ・カラザンスさん(54)が接種第1号となった。この日は医療従事者112人が接種を受けたが、その中の一人で看護助手のヴァヌジア・サントスさん(50)は先住民の接種第1号となった。
 ドリア知事はこの日の会見で、「これは科学の勝利であり、命の勝利、ブラジルの勝利だ」「今日は、否定主義と、死の匂いが好きな人たちに対する勝利の日だ」と言って、コロナバックの承認を喜んだ。
 ただし、今回承認されたのは、中国から輸入したワクチンとインドから輸入する予定のワクチンであるため、ブタンタン研究所は改めて、同研究所で瓶詰したワクチンの緊急使用許可も申請する。
 各州の知事達からの要請で、各州への予防接種の配布とキャンペーンは18日からに前倒しされたが、インド政府がオックスフォード・ワクチンの輸出を遅らせており、18日のワクチン配布はコロナバックだけに限定されて始まった。