国家衛生監督庁(ANVISA)が17日にコロナ・ワクチン2種の緊急使用承認を出したのを受け、接種を即日開始したサンパウロ州に続き、翌18日から全国にも広まっている。昨年末から調達が始まっていたコロナバックはすぐに全国配布され、同日中に予防接種を始めた州も出ている。だが、連邦政府が当てにしていたオックスフォード・ワクチンの方はインド政府がブラジル輸出をしぶっており、保健省の手際の悪さと相まって、計画通りにいかない可能性が出てきたと指摘されている。19日付現地紙が報じている。
17日の承認を受け、保健省は18日朝、グアルーリョス市の保管所に州知事たちを集め、短い式典後にコロナバックの全国配布を始めた。コロナバックの配布はパズエロ保健相自ら陣頭指揮をとって行われ、早めに到着した州では18日午後、到着が遅れた州では19日から、予防接種を開始した。
早めにワクチンが到着した、アマゾナス、セアラー、ゴイアス、南マット・グロッソ、ピアウイ、サンタカタリーナなどでは、医療従事者などから選んだ代表者への接種を行って、キャンペーン開始を告げ、同日からワクチン接種を始めた。
ワクチン割り当てはサンパウロ州を含む南東部で252万4360回分、北東部で143万6160回分、南部で75万1440回分、北部で70万8440回分、中西部で57万4160回分で、計600万回分となる。
だが、初日から保健省が空輸に関して混乱。便が度重なる変更を重ね、ワクチン到着が大幅に遅れる州もでた。たとえば、リオでは13時到着予定が17時、バイア州では午前中の予定が夕方に届いた。現役軍将校である保健相の、本来の専門分野がロジスティクス(物流)であるのに、今回のあまりの手際の悪さに批判が集中している。
大半のワクチンは空軍機を使って各州州都に届けられたが、一部の州へは、アズル、ゴル、ラタムといった民間航空機を利用する必要も生じた。それでも、19日には全ての州にワクチンが行き渡り、ワクチン接種がはじまっている。
保健省は先日も、医療崩壊が進んで病院用の酸素ボンベが底を尽き、人工呼吸器が使えなくなるなどして大混乱が生じたアマゾナス州マナウスの窮状に関しても、「役立たず」と強く批判されたばかりだ。
さらに、現状ではワクチンをコロナバックだけに依存する状況となっている。この点に関し、ルイス・エンリケ・マンデッタ元保健相は、「コロナバックだけに集中してしまっては、予防接種計画が止まってしまう」と警鐘を鳴らしている。
一方、オックスフォード・ワクチンの方はまだ、ブラジル到着のめどすら立っていない。ブラジル側で同ワクチンの生産・調整担当のオズワルド・クルズ財団は、インドから空輸するつもりだが、同政府が「国内需要を優先」しているからだ。インド政府は19日に他国への輸出を認め、20日にオックスフォード・ワクチンを6カ国に輸出する手続きを取っているが、その中にブラジルは含まれていない。
他方、ANVISAは米国ファイザー製薬とスイスのジャンセン社の工場がワクチン製造に適していることを18日に認めた。これで、両社からのワクチンの緊急使用願いが出されることが確実視されている。