ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》アマゾナス州地方部でも7人が窒息死=熱帯雨林の陸の孤島で=パラー州でも医療崩壊

《ブラジル》アマゾナス州地方部でも7人が窒息死=熱帯雨林の陸の孤島で=パラー州でも医療崩壊

マナウス市からパラー州ベレン市に移送される患者(19日、Marcelo Seabra/Ag. Para)

 【既報関連】アマゾナス州州都マナウス市の病院で医療崩壊が起き、14日には酸素不足で新型コロナ感染症患者が窒息死した上、他州に患者を移送する必要が生じた。さらに19日には、州都から南西に約360キロの場所にある病院でも酸素不足でコロナ患者7人が死亡する事態が発生と19日付現地サイトが報じた。
 酸素不足による死者が出たコアリ市は人口8万6千人で、州5番目の人口を誇る。だがアマゾン大森林の「陸の孤島」のような町のために陸路がない。時間のかかる川船か、運賃が高い飛行機しか交通機関がない町だ。
 同市市役所によると、地域病院にあった酸素ボンベ約200本は先週、州保健局が回収したが、18日に届くはずのボンベ40本が届かず、その間に入院患者が死亡した。回収されたボンベの大半は充填待ちだったが、一部はマナウス市に送られたという。
 同州の19日現在の新型コロナ感染者は23万3971人(5万6452人/100万人)、死者は6450人(同1556人)で、入院患者数が急増した事で生じた病床不足は解消できていない。
 同州健康監視財団によると、18日夜現在のコロナ感染症による入院患者数は、非常に危険な状態の重症者で特別観察下の患者24人と集中治療室598人、一般病室1144人だった。
 州保健局によると、コアリ市への酸素ボンベの配送遅れは、酸素を供給するホワイト・マルチンス社によるボンベの搬送開始が遅れた上、コアリ市の空港は夜間運航を認めないため、192キロ離れたテフェ市にボンベを送り、そこからは船で運ぼうとした。

 だが積み替え作業で遅れが生じ、18日に届けられなかったという。コアリ市の地域病院で患者7人が窒息死との報道後、同州地裁は48時間以内に酸素ボンベ155本を届けるよう州政府に命じた。
 アマゾナス州の医療崩壊への警告は、8日に保健省に届いており、パズエロ保健相も11日に現地入りしていた。にも関わらず、酸素不足とそれによる死者発生、他州への患者移送などが起きた事は、病床増設の不手際や物資調達や輸送システムの不備など同様、現政権や保健省が対応を怠った証拠と見られている。
 14日に起きたマナウス市での酸素不足と窒息死の報道後、連邦政府はボンベを輸送していた空軍機に修理の必要が生じて運航を停止する必要が生じたと釈明した。だが連邦検察庁や州検察局、国と州の司法支援局は酸素不足は国の責任とし、病院への酸素供給を要請。これを受けた裁判所は18日、酸素不足は空軍機のせいとはいえないとして、連邦政府に同州への酸素供給を命じた。
 エドゥアルド・ボルソナロ下議は同日、マナウスの窮状は解決と語ったが、実際には14日の窒息死事件で始まった他州への患者移送は19日も続いている。
 18日には同州と境を接するパラー州のファロ市でも酸素不足による窒息死が発生。先週以降のアマゾナス州での窒息死は3市で18人、パラー州では6人とされており、北伯地方での医療崩壊は深刻だ。
 アマゾナス州住民の間では、病院で死ぬなら自宅で死にたいと言い出す患者や、自分達が世話をすると言い張る家族が出てきており、酸素ボンベを抱えて街頭に並ぶ人の列もできている。