新型コロナの感染再燃で医療崩壊が起き、国内外からの支援の手も伸ばされているアマゾナス州マナウス市で、予防接種キャンペーンの対象外の女医2人が予防接種を受けている写真がSNSに掲載され、検察局が捜査に乗り出す事態が生じ、予防接種キャンペーンが一時的に停止された。
問題になったのは19日、マナウス市内に病院や大学などを持つ企業家一族のガブリエレ・キルク・リンス、イザベレ・キルク・リンスの女医2氏が予防接種を受けている様子を撮した写真がSNSに掲載されたことだ。
まだ接種対象ではない人が接種を受けた事を疑問視した人や、本来接種を受けるべき人達へのワクチンが横流しされたのではないかと疑った人が市や州の当局に訴え、検察局が捜査に乗り出す事になった。
これを受け、市長や知事、州と市の保健局、検察局の担当者らが優先接種の対象者を確認する必要が生じ、疑惑解明に向けた捜査も行われる事になった。予防接種の一時停止は20日夜発表され、21日は救急隊員に対する予防接種だけが行われた。予防接種は22日から再開される。
マナウス市長は19日に、二人の女医は勤務中に接種を受け、その写真を掲載したとして、医療従事者への接種は基準には反しないとの見解を表明した。
しかし、アマゾナス州では、医療従事者の中でも特に新型コロナに感染する危険度が高い現場(コロナ感染者用の病棟や集中治療室、検査室、救急診療所や保健所など)で働いている人への予防接種を優先しており、医療従事者全てが対象ではないとの方針を打ち出している。
マナウス市ではワクチンの配布数のアンバランスも問題になっており、医療従事者組合からは、公立病院の中で感染の危険度が高い現場にいる医療従事者用のワクチンは現段階で接種を受ける事ができるはずの人数分配布されていないのに、なぜ二人の女医は優先接種の対象者に先駆けて接種を受けられたのかなどの疑問の声も出ている。
アマゾナス州ではワクチンの一部が紛失した疑いなども出ており、コロナ感染者への対応ができなくなる医療崩壊以外にも様々な問題が噴出している。
ベネズエラから送られた酸素を積んだトラック5台がマナウス市に到着し、聖市の私立病院が寄贈した酸素を発生させる装置なども現場に投入されようとしているが、優先順位の不統一やワクチンの横流し疑惑など、現場の医療従事者が患者への対応だけに集中できる状態には程遠い現状が垣間見られる。(20、21日付G1サイト、21日付アジェンシア・ブラジルなどより)