「ボルソナロ政権がコロナ禍のパンデミックで犯したと見なされるミスや誤った政治判断に対して責任法が問われるべきか」の見解に関して、連邦検察庁のアウグスト・アラス長官の表明した見解が、最高裁や検察内部から強い反発を呼んでいる。20、21日付現地紙、サイトが報じている。
アラス長官は、新型コロナの感染再燃や、アマゾナス州マナウスなどで人工呼吸器などに使う酸素が不足するなどの医療崩壊が起きていることなどを理由に、大統領やエドゥアルド・パズエロ保健相を責任法に問い、罷免、解任を求めることができるかについての見解を求められていた。
それに関し、アラス長官は、ボルソナロ大統領が罷免の危機にあることを認めた上で、「大統領を罷免するか否かの判断を行うのは連邦議会の管轄であり、検察庁ではない」との見解を示した。
同長官はさらに、「昨年3月に大統領が出した非常事態宣言は、社会や制度の安定を維持するためのもの」「(現状を判断するには)節度と知恵が必要」と発言した。
「非常事態宣言」には4種類がある。非常事態において、大統領が出せる国家レベルで国民の行動を最も厳しく制限する宣言が「estado de sítio」で、その次が今回問題になっている「estado de defesa」。大統領はもちろん、州知事や市長でも宣言できるのは厳しい方から「Estado de calamidade pública」、その下が「Situação de emergência」となる。
昨年3月に大統領が宣言したのは「estado de calamidade pública」で、それよりも強い「estado de defesa」宣言を大統領がこの状況で出すことが可能だとするとのアラス長官の解釈は、コロナ禍において自治体の権限を脅かすものとして強く反発の声が上がった。
20日、最高裁のマルコ・アウレーリオ判事は、「現在は火も煙も立っていることが明らかだ。保健、社会、経済、政治の全てにおいてだ。その状況でこのような見解を表明するのはいかがなものか」と自身のブログでアラス氏を批判した。さらに、「非常事態宣言というものは、最高裁が日頃、起こらないように避ける努力をしているものだ。それを宣言した場合、その後にどう戻ればいいのかわかっているのか」と語気を強めてさらに批判した。
元最高裁判事のカルロス・ヴェローゾ氏も「estado de defesa の使い方が根本的に間違っている」と批判している。
アラス長官の発言は検察庁内の副長官たちをも驚かせた。副長官らが同日中に連名で出したアラス長官に対する反論では、他国や知事たちが採用した外出自粛などの対策に大統領は真っ向から反対し、マナウスでの医療崩壊が起きた時も責任を回避しようとするかの発言を行った事や、ボルソナロ大統領が最近、選挙方法の改正を望む発言を行った事、「民主主義は軍が決める」発言など、問題とされている一連の言動を具体的に指摘している。