17日の国家衛生監督庁(ANVISA)でのコロナバックのワクチン承認で、ジョアン・ドリアサンパウロ州知事の株が一気に上がった。
そのことはもうすでに数値として現れている。クエストという団体が出している、ツイッターやフェイスブック、ユーチューブ、インスタグラムなどのSNSでの影響力をはかるデジタル人気指標(IPD)によると、0点から100点の指標ポイントで2021年に83・4ポイントを超えていたボルソナロ大統領の評価が、21年に入って日に日に落ち、17日には66・3P%まで下がった。
その一方、16日に25・2Pだったドリア氏は17日に43・9Pと、たった1日だけで18・7Pも上がった。この日のドリア氏の人気は、22年の大統領選への出馬が予想される人の中では、人気司会者のルシアノ・フッキ氏と同率2位に並んだ。
さらに、この承認後にもドリア氏に追い風が実にラッキーな形で吹いている。
それは、承認されたもうひとつで、ボルソナロ政権がコロナワクチンのメインで考えていたオックスフォード・ワクチンが、インド側の反発から到着が遅れるという失態をおかしたことだ。
その穴を埋めるように、25日からサンパウロ州で接種計画をはじめる予定だったコロナバックが代わりに全国に送られ、各州で接種がはじまった。これはさすがにボルソナロ氏には大ダメージとなり、コロナバックを治験段階から一体となってサポートしてきたドリア氏の努力が実ったように見える。
ボルソナロ氏がワクチンに対して何も動かず、効用がないとされるクロロキンにばかりこだわる姿も人々の記憶に残っているからなおさらだ。
今回のコロナバックは、来年に迫った大統領選でドリア氏の絶対的なアピール・ポイントになるはずだ。やはりあれだけ長く続いている疾患を、自ら陣頭指揮をとって大統領のお株を奪ってワクチンを全国に支給した、ということが国民の記憶に残れば、それは投票のときには俄然有利になる。
もっともドリア氏は、まだまだ大統領選には不利だ。ボルソナロ氏やフェルナンド・ハダジ氏、シロ・ゴメス氏のような熱心な固定支持層が少ないからだ。
今でこそ反目する関係にあるものの、一時は「ボルソドリア」などと称してボルソナロ氏に近寄ろうとした姿を覚えている人も少なくない。このことから「信用できない」と語る向きも少なくはない。
ただ、浮動的な無党派層にとってはコロナバックはいいアピールとなったはず。現時点での大統領選の出馬が今ひとつ考えにくいセルジオ・モロ氏の支持層あたりの票を取り込めれば、チャンスの芽は出てきたようにも思う。(陽)