ブラジル岩手県人会は17日に『第62回定期総会』を開催し、22年間会長を務めてきた千田曠曉会長(79歳)から、初の二世会長、多田・マウロ・孝則氏(二世・56歳)に会長職交代が決まった。千田さんは感無量の様子で「長い間、皆さんに支えられたおかげでここまで会長職を続けることができました。本当にありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。
定期総会は午後14時半頃に第2次招集で開始された。会場は人間距離をあけるなど感染防止策を徹底し、そこに12人のメンバーが集まった。オンラインからも3人が参加し、合計15人で総会が行われた。
はじめに、岩手県人開拓先亡者に1分間の黙祷をささげ、開会宣言とともに開始された。
司会は多田さんが務め、2020年度事業報告ではコロナの影響で「わんこそば祭り」や「餅つき」など毎年恒例のイベントが相次いで中止になったことや、県人会創立60周年記念誌『あゆみ』が今年刊行予定であることも報告された。
2020年度会計報告では収入約9万4千776レアルに対して、支出は約10万6千635レと赤字で終わり、コロナが原因で例年のようにイベントや場所貸しができないことが打撃となったことが報告された。
今年度の事業計画について千田氏は、「例年通りイベントを行いたいがコロナ禍が終息するまでしばらく様子見です」と延べ、さらに「3月11日は東日本大震災10周年の為、追悼イベントを群馬県人会、福島県人会と共に行う予定です。このイベントはオンラインであっても何とか開催したい」と語った。
その後、役員改選が行われ、多田新会長を筆頭にした単一シャッパが提出・承認され、千田氏から多田氏に会長交代が決定した。
多田新会長は、「長い間、自分の時間を割いて県人会を支えていただき本当にありがとうございました。本当にお疲れ様でした」と感謝の気持ちを伝えた。それに対して千田氏は「この22年、不器用な自分が会長職を全うできたのは、多くの方の支えがあったおかげ。本当にありがとうございました」と述べ深々と頭を下げた。
その後、二人は力強く握手し役職をバトンタッチ。会場からは少人数ながらも大きな拍手が巻き起こった。
千田氏の前に会長を務めた菊池義治氏も「本当に長い間ご苦労さまでした。この県人会がコロナ禍でも存続できているのは千田さんのおかげ。ゆっくり休んで、また後進の育成に励んでほしい」と熱い言葉を送った。
■大耳小耳■
本年刊行予定の岩手県人会創立60周年記念誌「あゆみ」は、千田氏が2018年から製作着手したもの。ブラジルに入植した岩手県人のこれまでの歴史から現在までが約300頁にまとめられている。千田氏は、「一世として後世に何か形になるものを残さないといけないと思い作りました。発刊したら多くの人に読んでほしい」と語る。ちなみに同氏の父は1970年頃に発刊された創刊号を発案し、編集にも携わった。千田氏は「父の血をひいたのかも知れない」と笑顔で微笑んだ。
■ヒト街点描■日本経験豊富な多田新会長
岩手県人会初の二世会長として17日に就任した多田・マウロ・孝則氏(56歳)は、日本経験が豊富だ。
1985年に岩手県県費留学生として、91年には1回目のデカセギを、2018年には2回目のデカセギに行くなど日本滞在経験が豊富な人物だ。昨年12月にはデカセギを終えて帰国したばかり。
多田新会長は、今回の就任に際して「22年間も務めた千田前会長の次はプレッシャーがあるが、これまで以上に盛り上げることができるように精一杯頑張りたい」と述べ、今後についても「一世や二世だけでなく三世・四世の若手なども巻き込み、色々な世代が一つになって活動できるように先導したい」と意気込みを語った。
経験豊富で日本の習慣にも精通した、多田新会長の今後に大いに期待したいところだ。(淀)