ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)が新型コロナ禍に関する全国家庭サンプル調査(Pnad)を分析した結果、1月は世帯収入が月246レアル(1日8・20レアル)以下の極貧家庭は12・8%に増え、昨年同月の12・4%や19年初頭の11%を上回ったと1月31日付現地紙が報じた。
極貧者数は豪州の人口を上回る2700万人に及ぶ。昨年の極貧者は、緊急支援金支給開始後の5月で5・3%、8月は4・5%(940万人)に減ったが、緊急支援金減額で増え始め、支給停止後の1月に急増した。
コロナ禍による失業者増加や、緊急支援金支給で購買力が上がった人が消費した事によるインフレ高進、物価高や新型コロナの感染再燃が続く中での緊急支援金の支給停止は、貧困者の生活を直撃している。
緊急支援金が半減された9月からは求職者が増え、就労者も増えたが、昨年の正規雇用者増は14万2690人に止まった。11月現在の就労者(非正規雇用込み)は前年同期より900万人弱少ない。同月の失業率は14・1%で、失業者は1402万3千人いた。
コロナ禍に伴う緊急支援金支給は、北東部や北部を中心に消費過熱を招いた。逆にいえば、これらの地方は支給停止で収入が激減する人が多い事を意味する。
同日付エスタード紙によれば、緊急支援金の支給停止により、全世帯の53%を占め、世帯所得が月収2600レアル以下のD、Eクラスでは、必需品購入後に残る所得が平均23・8%(480億レアル)減る。低所得者は収入の8割を必需品に費やすから、手元に残る額は極僅かだ。
コンサルタント会社のテンデンシアスは、今年の国内総生産(GDP)は2・9%成長するがインフレは3・4%上昇、失業率は15・1%に達し、人口は3・7%減るとも予測している。
コロナ禍の影響は現在の所得だけではない。昨年3月以降、授業を受けられなくなった生徒や学生が将来にわたって失う所得も考えると、長年かけて改善していた社会格差や地域格差も広がる。
サンタカタリーナ州の公立校生徒で家庭学習用の教材を受け取れなかったのは2%だったが、パラー州では42%といった数字は、教育を受ける機会を失った事で、学業を続けていたら得られたはずの所得や就職の機会を失う人がコロナ禍で増えた事や格差拡大を予想させる。
概括すれば、北東部に住む黒人の若者が最も多くを失ったといえる。ブラジルでは勉強も仕事もしていない若者が35%に及び、14年の25%より増えている。
所得が減り、極貧層や貧困層に落ちる人が増えれば、ブラジルの経済成長を支えてきた家庭消費が落ち込み、成長速度も落ちる。
コロナ禍後の景気回復が遅れれば、GDPの3分の2を占め、貧しい人に就労の機会を与えるサービス業の回復も遅れる。昨年増えた就労者の大半は非正規雇用である事も不安要因の一つだ。
21年は極貧者急増で始まったが、予防接種の普及などでコロナ禍が終息しても、パンデミック前より格差が拡大している事は確かなようだ。