3日午後、アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)、ロドリゴ・パシェコ上院議長(民主党・DEM)を迎えての議会の開会式が行われた。ボルソナロ大統領は就任後初めてこの式に出席し、コロナワクチンのための費用確保を優先的に行うと宣言。午前中の会合で確認した両議長の思惑を反映した形の発言となった。また、ここでは「三権の協調性」や「議会内の平和」が議長らから求められた。4日付現地紙が報じている。
リラ、パシェコ両新議長を迎えての連邦議会開会式は3日、下院本会議場で行われた。この席で大統領は「二つの約束」と題し、「国民の命」と「雇用」の二つの確保を約束した。「連邦政府は一致協力してコロナウイルスの撲滅のために尽くし、人々の健康を守りたい」と語った。
大統領はさらに「連邦政府は保健省のワクチン計画にも財政的にもロジスティック的にも協力を惜しまない。そうすることで、ブラジル社会の日常を1日も早く取り戻したい」と語った。
この演説前、野党側からは「ファシスト」「大量殺人鬼」などの厳しい野次が飛んだ。大統領は昨年までは「雇用の確保」にこだわってコロナ対策を軽視。各州の知事が進める外出自粛令に従わないよう支持者たちを煽り、3密を生じさせた上、ワクチンに関しても「国民に接種義務はない」と消極的な姿勢を貫き、国としての強力なコロナ対策を取らなかった。その結果、現在20万人以上の死者が出て、アマゾナス州マナウスなどでは医療崩壊も起きている。
この野次に対して、ボルソナロ大統領の支持者側からは愛称のひとつである「ミット(伝説の男)」との掛け声が返されて会場が混乱。パシェコ上院議長は議会警察を呼ぶことも考えたが、「互いが意見や考えを表明する自由を認め、それぞれの違いに敬意を払うことで、国内に平和を取り戻そう」との呼びかけで落ち着きを取り戻し、演説に至った経緯があった。
大統領の発言のトーン変化には、中道勢力セントロンの意向が早くも感じられた。大統領は3日午前、両新議長と会合を持ち、今後の連邦議会の審議の優先順位などの確認を行ったからだ。
この会議でボルソナロ大統領は、「法と治安保障作戦(GLO)の最中に軍の兵士が犯した犯罪での刑罰の免除」や「学校に通わない家庭内学習(ホームスクーリング)の自由」といったイデオロギーを感じさせる提案や、「銃の所有や携行」問題、改革、民営化を議会審議での優先事項にするよう注文をつけた。
それに対し、リラ、パシェコ両議長が優先しようとしているのは税制や行政などの「構造改革」、予防接種の加速化や緊急支援金の復活などを含む「パンデミック対策」で、その意向は大統領にも伝えられている。
この開会式に参加したルイス・フクス最高裁長官は、コロナ禍は第2次世界大戦以来となる大いなる災いとして、犠牲者への哀悼の意を表すと共に、「三権の協調性」の必要を説いた。大統領は昨年、支持派たちの行った「反連邦議会、反最高裁」デモに自らも参加するなどして物議を醸していた。
リラ下院議長はさらに、前任のロドリゴ・マイア議長と大統領が対立状態だったことを例にあげ、議会内と三権の双方で友好的に協力し合うことを求めた。