国家衛生監督庁(Anvisa)が3日、新型コロナの予防接種ワクチンの緊急使用承認のために不可欠だったブラジル国内での治験という条件を外した。これにより、ロシア製のスプートニクVやインド製のコヴァクシンの緊急使用許可取得が容易になると3、4日付現地紙、サイトが報じた。
Anvisaが外したのは、ワクチンの有効性や投与する量、複数回投与する場合の間隔、副作用の有無などを確認するための最終段階の国内治験実施義務だ。同庁は一貫して国内治験の結果提出を求めてきており、他の国では認められたワクチンの購入や適用ができなかった。
だが、新型コロナの第2波で感染が急拡大しているのに使用できるワクチンの絶対量が足りず、このままなら接種終了は来年、現場からも予防接種の早期普及への配慮をといった声が高まるという現状に、基準変更を余儀なくされた。
新基準では「国外で治験が行われた場合は各種データの提出と最低1年間の観察、前臨床及び臨床試験が国内及び国際的に認められたガイドラインに従って行われた事の実証を要す」とあり、国外での治験結果へのアクセスが可能な事などが条件だが、国内治験は不要となった。
ただ、国内治験を行えば緊急使用承認までに10日を要するだけで済むが、国内治験を行わない場合は審査に30日を要す事になる。
同庁のメイルゼ・フレイタス理事は、「技術的な面以外の論議を外す事で、品質や効用、安全性を認められたワクチンの入手が容易になる」との見解を表明した。基準変更は、国内治験未実施のロシア製のスプートニクVやインド製のコヴァクシンの緊急使用承認を容易にする。
これを受け、保健省は3日、両ワクチンを製造している二つの研究所の代表と5日に会談し、3千万回分以上のワクチン購入を交渉する意向を表明した。
スプートニクVはウニオン・キミカ研究所が既に国内生産を手掛けている。ボルソナロ大統領はこれを見越してか、オックスフォードワクチンの完成品輸出と、同ワクチンとコロナバックの有効成分(IFA)の輸出促進を要請するため、1月にインドと中国に文書を送った際、ロシアにも協力を要請していた。
コヴァクシンの製薬会社代表はプレシーザ・メディカメントス(PM)で、3日にサンパウロ市アルベルト・アインシュタイン病院と治験に関する契約を結び、3月に治験を開始する。ブラジル・ワクチンクリニック協会(ABCVAC)は500万回分のワクチン入手への仲介をPMに要請済みだ。
オックスフォードワクチンのIFA到着の日程は定かではないが、コロナバックの方は3日夜、5400リットル(860万回分)が到着。ブタンタン研究所は4日にIFAを受け取り、ワクチン製造を開始。10日には5600リットル、月末には1万リットルが到着する予定である事を明かすと共に、今回到着したIFAを使ったワクチンは25日から保健省に納品との意向も示した。
なお、世界保健機関傘下でワクチン配布を担当するコヴァックス・ファシリティは3日、ブラジルには上半期に1067万回分を配布と発表。配布は2回に分けて行われるが、到着日時は未定だ。