2018年大統領選で労働者党(PT)の公認候補だったフェルナンド・ハダジ氏が5日、2022年の大統領選にも出馬することを宣言した。出馬を期待していた人が少なくなかったルーラ元大統領との話し合いで決まったという。この背景には、ルーラ氏の抱える裁判事情あるようだ。5〜8日付現地紙が報じている。
ハダジ氏の出馬は、本人が5日にサイト「TV247」で認めて判明したもの。このインタビューでハダジ氏は、「先週の土曜日(1月30日)にルーラ氏と2人で話しあった。そこでルーラ氏が私に大統領候補になるよう頼んだ」と語った。ハダジ氏は同日、CNNブラジルのインタビューでもこの件について認めたため、週末の話題を呼んでいた。
22年大統領選のPTの候補がハダジ氏になるのか、ルーラ氏になるのかは、このところ注目度が上がっていた。それは9日に、最高裁でラヴァ・ジャット作戦元担当判事のセルジオ・モロ氏の裁きの正当性を問う審理が行われることになっているためだ。
最高裁は1日、ルーラ氏とその弁護団に対し、2019年にハッキングされ、同年に「ヴァザ・ジャット報道」として物議を醸したモロ氏の携帯電話での会話の内容の全容を知る権利を認めた。これをめぐり、最高裁判事の一部はすでに、「モロ氏は判事の立場でありながら、検察を指揮するような様子が強くうかがわれる」として、モロ氏を強く批判している。そのため、同元判事が2017年に下した、サンパウロ州グアルジャーの高級三層住宅を介したルーラ氏の贈収賄容疑の判決が無効とされる可能性が出てきている。
その場合は「ルーラ氏が22年の大統領選に出馬できるのではないか」との希望的観測が広がっていた。この件の2審で有罪となったため、ルーラ氏は18年大統領選挙に出馬できなくなった。だが、収監されても最高裁で出馬禁止が正式決定するまでは、ルーラ氏は世論調査で支持率1位であり続けた。
だが、最高裁が審理するのはグアルジャーの件だけと見られているため、ルーラ氏は22年出馬は困難と考え、ハダジ氏に左派の取りまとめ役をゆだねたようだ。その背景には、ルーラ氏が抱える別の裁判、サンパウロ州アチバイア別荘を介した贈収賄容疑がある。
この件の一審はモロ氏ではなく、パラナ州連邦地裁の後任者であるガブリエラ・ハルト氏がつとめており、2審でも有罪判決が出ている。ルーラ氏の弁護団は、どちらの裁判もモロ氏が絡んでおり、一方の判決が無効化されれば、他方もそれに倣う可能性があるとみている。だが、ハルト氏はモロ氏に近い人物ではあっても、同判事の判断に関しては、モロ氏を理由に覆る可能性が少ないと見られている。
ハダジ氏は18年の大統領選で、ルーラ氏の代替候補としての出馬ながら、決選投票で44%余りの得票率をあげるなどの実績がある。ボルソナロ大統領の支持率が落ちた今、ハダジ氏を候補とすることで、左派側の代表候補にしたい意図が今回の発表にはあったと見られている。
左派で大統領選出馬が予想されている一人でマラニョン州知事のフラヴィオ・ジノ氏(ブラジル共産党・PCdoB)は、「ルーラ氏が出馬するならば出馬しない」と公言している。他方、20年サンパウロ市市長選で次点となり注目されたギリェルメ・ボウロス氏(社会主義自由党・PSOL)は、「左派が一つとなってボルソナロ大統領打倒を目指すことには賛成だが、そのためには、名前を決める前に政策を決めないと」との言葉で、早い決定を批判している。