2019年にハッキングされ「ヴァザ・ジャット報道」の元となった、セルジオ・モロ元ラヴァ・ジャット(LJ)作戦担当判事と検察庁パラナ州支部LJ特捜班員らの携帯電話の対話内容を、同判事から有罪判決を受けたルーラ元大統領が閲覧することを、最高裁第2小法廷は9日に判事投票4―1で認めた。この判決は、国内史上最大級の汚職捜査であるLJ作戦が受けた最大の敗北として注目されている。9、10日付現地紙、サイトが報じている。
モロ氏や特捜班は2019年当時から、サイト「ジ・インターセプト・ブラジル」が行ったヴァザ・ジャット(VJ)報道に対し、「あれは違法にハッキングされたもので、本物だとは認めない」とし、その内容を否定していた。VJ報道では、LJ作戦担当判事だったモロ氏が、判事の立場でありながら、あたかも自身が検察庁パラナ州支部のLJ捜査班を指揮しているような言動や、捜査対象となる政治家を自身の政治的嗜好で選り好みしている様子が報じられた。
1月24日、最高裁のリカルド・レヴァンドウスキー判事が、ハッキングの元となった携帯電話の対話の全容公開を認めた。それを不服としたLJ捜査班が控訴を行った結果、9日の第2小法廷審理となった。
だが、審理の結果はモロ氏やLJ班の思惑とは反対の展開となった。レヴァンドウスキー判事が報告官となり、改めてルーラ氏が対話の全容にアクセスすることを許可。それに対し、カシオ・マルケス、ジウマール・メンデス両判事が賛成。通常はLJ側に有利な判断を行ってきたカルメン・ルシア判事までもが賛成した。反対は、「大法廷での全体審理」を求めた、LJ担当のエジソン・ファキン判事のみで、4―1で検察側の要求が退けられる結果となった。
判事たちからはモロ氏に対しての厳しい言動が目立った。とりわけ、メンデス判事は辛辣で、「もし仮に、あの内容がハッキングされたものではないとするならば、(聖州)アララクアラのハッカーたちにはノーベル文学賞並みの才能があるということになる」と皮肉り、「これは人類の司法史上最大のスキャンダルだ」と言い切った。
この判断の結果、ルーラ氏側がハッキング内容の全てに目を通すことが認められただけでなく、モロ氏がこれまでLJ判事として行ってきた判決の多くが覆る可能性が出てきた。それには、現在3審まで進んでいるルーラ氏のサンパウロ州グアルジャーの高級三層住宅を介した贈収賄容疑も含まれている。
1日にレヴァンドウスキー判事がハッキング内容の公開を許可して以降も、「LJ班は18年4月にルーラ氏の実刑が決まった際に班をあげて祝っていた」「LJ班のデルタン・ダラグノル主任はルーラ氏の実刑を『CIAからのプレゼントだ』と言って喜んだ」などの報道が行われている。
米国のニューヨーク・タイムズは今回の件を、「最大の汚職捜査が最大の司法スキャンダルに変わってしまった」と報じている。