サンパウロ市から315キロ、サンパウロ州の中でも新型コロナの感染率が高いリベイロン・プレット地方にあり、人口4万5千人のセラーナ市が注目を浴びている。
というのは同市に住み、18歳以上の人は全員17日から、新型コロナのワクチン接種を受ける事ができるからだ。
他の地域では医療従事者や先住民、85歳以上の高齢者など、特定の人しか接種を受けられず、若い人はいつになるかわからない。だがこの町の住民だけ実験的に、妊婦や授乳中の人は対象外だが、4万5千人中3万人が一斉に接種を受けられることになったから、注目されるのも当然だ。
これは、ブタンタン研究所が製造しているコロナワクチンのコロナバックの有効性を確認するための試みで、一部の住民は「モルモットにされるのは嫌だ」と考えている。だが大半は「いつになれば接種を受けられるかわからず、不安に駆られている人が多いのに、18歳以上なら全員に接種が施されるから、安心して過ごせるようになる」と歓迎しているという。
コロナバックは、ブラジル国内の医療従事者1万2500人による治験で有効性や安全性が確認されたとし、1月17日に緊急使用許可が出た。
接種は強制ではなく、11日にはボランティアとして接種を受ける人のデータ登録作業も始まった。接種は市内を25に分けた後、四つに大別して行われ、最初の地区での接種が始まるのは17日。最後の地区は3月10日からだという。
自分達の町が選ばれた事に対する市民の反応は様々だ。だがこのニュースは、自分達も一斉接種の恩恵にあずかりたいという人達からの貸家はないかという問い合わせ急増という事態を生んだ。不動産屋によると、問い合わせの電話は鳴りやまず、近隣諸市だけでなく、サンパウロ市などの遠方や州外からも電話がかかってくる。
不動産屋は、契約には保証人が必要で、原則として1年間は住む事、接種前に市役所がデータを確認し、接種を認めるかを決めるという基準を提示しているが、「1カ月だけ住むが家賃は1年分払う」と持ち掛けてくる人もいるという。
ただ、市役所の担当者によると、ブタンタン研究所は昨年後半に登録作業を始めており、どの地区にどの位の接種対象者がいるかも確認しているから、今の段階で借家を探し、引っ越してきても無駄だという。
同市での一斉接種は最近までシークレット(秘密)の意味の「S計画」と呼ばれていたが、現在はセラーナ市のSの「S計画」と呼ばれている。
ブタンタン研究所はS計画用のワクチンは保健省に納入するものとは別に取り分けており、国の接種計画には影響を及ぼさない。また、接種開始前と接種後のデータは、四つに大別された地区毎また地区同士で分析、比較するという。
同市では一斉接種により経済活動への復帰も早まると期待しているが、同市に隣接するアルチノポリス市の人々は隣人達を羨ましがり、次はうちでもと願っているという。(10日付エスタード紙、10、11日付UOLサイト、11日付G1サイトなどより)