民主社会党(PSDB)内部で、党内での発言力が増しているジョアン・ドリア・サンパウロ州知事に対して反旗をひるがえす勢力が現れ、党内が2分化された状態となっている。契機はドリア氏が、かつての党の実力者だったアエシオ・ネーヴェス氏に離党を迫ったことにある。10、11日付現地紙が報じている。
事の発端は、1日に行われた下院議長選でPSDBの一部下議らが造反し、党内一致で投票することになっていたロドリゴ・マイア前下院議長推薦のバレイア・ロッシ氏(民主運動・MDB)ではなく、ボルソナロ大統領が推薦するアルトゥール・リラ氏(進歩党・PP)に投票したことだ。
これを不審に思ったドリア氏は、造反を率いたのがアエシオ氏であることを知り、8日にバンデイランテス宮で開いた、サンパウロ州選出の下議や党の重鎮たちとの夕食会の場で、「党の方針に従わない人物は離党するべき」と主張し、アエシオ氏を追放するよう求めた。
下院議長選でのロッシ氏支援やアエシオ氏追放などの動きは、2022年の大統領選を念頭に置いたものだ。ボルソナロ氏は22年の大統領選への出馬が有力視されるドリア氏の最大の政敵で、コロナ禍をめぐる意見の相違で、その関係がますます悪化している。
アエシオ氏が同党追放の危機にあったのはこれがはじめてではない。同党党首を務めていた2017年、警察のおとり捜査に引っかかり、食品大手JBS社の社主ジョエズレイ・バチスタ氏との間の贈収賄交渉を録音や録画で暴露され、党首と上議の停職処分にあった。
このときは自身の逮捕こそ免れたものの、実姉をはじめ、賄賂の受け取りに関与した近親者や側近は逮捕。疑惑に対する釈明もいまだにできていない状態で、このときから同党内で追放を求める声はあった。
だが、「ブラジル民政復帰の父」とも称されるタンクレード・ネーヴェス氏の孫で、2014年の大統領選で次点になった実績も持つアエシオ氏には、地元のミナス・ジェライス州をはじめとする擁護派も少なくはなく離党は免れた。18年には下議に当選していた。
党内に強い支持基盤を持つアエシオ氏だけに、ドリア氏のこの行為は反感を招いた。加えて、ドリア氏はアエシオ氏の処遇を決める党首の立場にはない。
そうしたこともあり、PSDBの各州支部長たちは、現党首のブルーノ・アラウージョ氏の任期を延長すること(続投)を求め始めている。同党では慣例的に、大統領選直前の党大会で、同党からの候補者を党首に選出してきた。
ドリア氏出馬でほぼ間違いがないとされていた同党の22年大統領選候補にも見直しを求める声が起こっている。党内の反ドリア派からはリオ・グランデ・ド・スウ州知事のエドゥアルド・レイテ氏を候補に推す声もあがりはじめており、11日には同党下議の一団が、レイテ氏を訪問して会談を行った。
レイテ氏は弱冠35歳の若さで同州知事を務めており、その手腕は、カルドーゾ大統領をはじめとする党重鎮からも高評価されている。
ドリア氏は2016年のサンパウロ市市長選の際、実業家から転身してPSDBに入党した新興勢力で、かねてから党の古株を中心に強い反感も持たれている。