【既報関連】最高裁への侮辱行為と軍政令第5号(AI5)を支持する発言で16日に現行犯逮捕されたダニエル・シルヴェイラ下議(社会自由党・PSL)。その勾留延長を問う審議が19日の下院で行われ、364対130の圧倒的な大差で勾留延長が決まった。この結果は、ボルソナロ大統領支持者が唱える極右的な言動が通じにくくなったことを意味している。19、20日付現地紙、サイトが報じている。
19日の審議は午後5時から行われた。この審議の直前にはシルヴェイラ氏を擁護する下院保守派の圧力もあり、当初報告官をつとめる予定だったカルロス・サンパイオ下議(民主社会党・PSDB)が、マグダ・モファット下議(自由党・PL)に交代する一幕があった。
だが、モファット下議に代わっても、当初から圧倒的に不利と言われていたシルヴェイラ氏の立場は変わらなかった。モファット氏はシルヴェイラ氏を、「連邦議員としての権利を民主主義の攻撃に使用し、さらに少数派の人々を攻撃するような物言いを行っていた」と評した。
その上で「すべての議員は政権や議員を批判する権利を持っている。だが、それは民主主義への直接的な攻撃行為とは区別されなければならない」とし、シルヴェイラ氏の勾留延長を主張した。
シルヴェイラ氏自身は最高裁のアレッシャンドレ・モラエス判事から許可を得、刑務所からのビデオ中継で下院での審議に参加しており、モファット氏の発言の前後に、「最高裁への批判の際は、感情的になりすぎてしまった」とし、これまでの攻撃的な態度と過激な行動を謝罪した上、「連邦議員は逮捕できないはず」などと弁明し、勾留延長を免れようとした。
モファット氏の発言後も「本当に後悔している。全ての国民に謝罪したが、まだ攻撃されている。AI5も擁護したことはない。あの当時は必要に駆られ、AI5を支持したが、軍政を擁護する気はない」とまで言い切った。
このあと、勾留延長に賛成派と反対派の議員が主張を行い、反対派でシルヴェイラ氏同様に熱心なボルソナロ大統領派のカルラ・ザンベッリ下議(PSL)などは、改めて表現の自由を訴えた。
だが、投票では勾留延長には364票と、当初予想された350票を超える賛成票が入れられた。反対派は130票で、下院全体の3分の1(170票)さえ大きく割り込んだ。
議員罷免に必要な票数が下院全体の3分の2以上であることを考えると、この票数はシルヴェイラ氏にとっては厳しい結果となった。シルヴェイラ氏の罷免問題は23日より下院の倫理委員会にかけられる。
投票結果が出たあと、アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)は「三権の調和は保たれた結果となった」と発言。「これでシルヴェイラ下議の態度も変わるだろう」とし、昨年の3〜5月に繰り返し起きた反民主主義デモで叫ばれたような最高裁を攻撃する物言いが通用しないことを強調した。
とはいえ、22日付エスタード紙などによると、ボルソナロ派の議員たちはまだ、最高裁に対する批判などを繰り返しているという。