《ブラジル》下院で不逮捕特権強化を画策=疑惑のPEC審議が進行中

下院で現在、議員の「不逮捕特権」に関して、現状の「現行犯逮捕のみ」しているところを、さらに逮捕を難しくするための憲法改正法案(PEC)審議が進行中だ。これは16日にダニエル・シルヴェイラ下議(社会自由党・PSL)が現行犯逮捕された直後だけに波紋を投げかけている。24、25日付現地紙、サイトが報じている。
このPECは、上議・下議といった連邦議員の逮捕に関して定めたもの。議員特権を拡大するためのこのPEC作成は、中道勢力のセントロンが中心となって行った。同案は下院憲政委員会(CCJ)の名前で本会議に提出されたが、CCJそのものはまだメンバー未定で、草案も審議していない。
24日に審議されたPECは、シルヴェイラ氏が逮捕されたときのような、「単独の最高裁判事の判断で逮捕となるのではなく、下院または上院の本会議の判断後に逮捕できるとし、それまでは議会内で勾留する」ことや、現行犯逮捕に該当する犯罪行為は憲法に反することが明確、または、重犯罪とみなされるものに限ることなどを明記しており、304対150で1回目の承認が行われた。
この法案はシルヴェイラ氏の逮捕から1週間ほどで急速に審議、承認されており、マスコミや国民、さらには下院内でも社会主義自由党(PSOL)やノーヴォなどの政党から「逮捕免除法案」と呼ばれるなど、強い反発を受けている。
これに対し、セウソ・サビーノ下議(民主社会党・PSDB)は、「CCJはあくまで憲法に忠実な判断を行う。むしろ民主主義はより強化される」として反論している。アルトゥール・リラ下院議長も25日、「この法案は連邦議員を守るために作るのではない」と反論している。
シルヴェイラ下議の場合、最高裁判事の全員更迭を求める行為も、軍政令第5号(AI5)を求める行為も共に違憲行為であり、下院もシルヴェイラ氏の拘束延長を364対130で支持している。
だが、最高裁側はこのPEC改定に関し、「(シルヴェイラ氏の逮捕を命じた)アレッシャンドレ・デ・モラエス判事に対する報復行為」ととらえており、不満を抱いている。
なお、このPECはもう一度下院で承認を得なければならず、次の投票では下院全体の3分の2(308票)以上の賛成が必要とされる。