ダニエル・シルヴェイラ下議が現行犯逮捕された直後から下院では、議員現行犯逮捕を難しくするための憲法補足法案(PEC)を成立させる動きが加速していることに批判が高まり、一部では「免罪PEC(PEC da Impunidade)」と揶揄されている。また、ボルソナロ大統領長男フラヴィオ上議のラシャジーニャ疑惑の審理で同上議に有利な判断を下した連邦高等裁(STJ)判事が、別の審理で矛盾する判断を行うなど、過剰ともいえる政治家保護の流れが問題となって来つつある。26日付現地紙が報じている。
24日に下院が初回の承認を行ったPECは、承認直後からマスコミや司法界を中心に批判が強く、最終的な詰めを巡って下院内で意見の対立が生じている。
その影響もあり、25日に行われる予定だった2回目の投票は延期。投票は26日午前10時からとなっていたが、これも遅れている。
同PECで問題となっているのは、現行犯逮捕の過程だ。従来なら、最高裁が逮捕を決めた後、24時間以内に連邦議会に通達すればよかった。勾留継続か否かは、逮捕者が出た議会(下院または上院)が決めることになっていた。
だが、同PECでは、連邦検察庁が逮捕または一時的な身柄の拘束を求めた時以外、裁判所は対象者を釈放しなければならない。対象となる議員は当該議会の本会議で逮捕を認めるかを決めるまでは議会内で勾留され、連邦警察署などに留め置くことはできない。
現行犯逮捕されるのは明らかに違憲となる行為や、重犯罪とみなされる犯罪行為を行った場合のみで、民事上または刑事上の責任を問われることはなくなる。
また、議員停職などの処分に関しても、従来は罪状により、地裁を含む裁判所の判事が判断していたが、今後は最高裁の全体審理で確認後に効力を発することになる。
家宅捜索などについても、従来は罪状により、該当する裁判所の判事が令状を出すことができていたが、議会内の捜索令状は最高裁のみが出せるとし、議会警察の同伴も規定している。
このPECでは当初、フィッシャ・リンパ法に関しても、従来は2審有罪で自動的に8年間の出馬禁止(被選挙権喪失)が決まるところを、「抗告後の裁判で有罪が確定したら出馬禁止」としていた。
この文面だと法の適用を逃れるために1審から2審に抗告しない可能性が生じるため、強い批判を受け、報告官のマルガレッタ・コエーリョ下議(進歩党・PP)が外している。
このPECが通過するには全体の5分の3、下院で308票、上院なら49票での承認が2度必要だが、批判の高まりで難しくなってきている。
大統領長男に有利な判決の背後に矛盾も
また、23日にフラヴィオ上議のラシャジーニャ疑惑で、疑惑の元となった金融活動管理審議会(COAF)の資料は「証拠不十分」とし、情報開示命令も無効との判断を下した4人の内、レイナルド・ダ・フォンセッカ、ジョエル・パシオルニック、リベイロ・ダンタスの3判事が、COAFを扱った別の訴訟で今回と全く反対の判断を下していたことがフォーリャ紙の報道で明らかになっている。
この審理に関しては以前から、前STJ長官のジョアン・オタヴィオ・デ・ノローニャ判事の意向の強さが報じられている。同判事はこれまでもボルソナロ一族に有利な判決を多く行っている。