ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》緊急支援金の緊急PECを上院承認=上限は440億レアルに=「250レアル4回案」か

《ブラジル》緊急支援金の緊急PECを上院承認=上限は440億レアルに=「250レアル4回案」か

3日の上院(Fabio Todrigues Pozzebom)

 3日と4日、上院はコロナウイルス対策で、昨年に引き続き、2021年も緊急支援金を支給するための憲法改正法案(PEC)を審議し、2度の投票の末、正式に承認した。同PECは今後、下院に回され、支給期間や支給額などの詳細を詰めることになっている。下院での審議も最優先扱いされる予定で、詳細が承認されれば、大統領の裁可後に支給がはじまる。4日付現地紙、サイトが報じている。
 上院は当初、3月下旬からの緊急支援金支出開始を目指し、先週のうちに緊急PECの投票を行う予定だった。だが、各政党の思惑が食い違い、政党リーダーの話し合いでも決着がつかず、審議と投票が今週にもつれこんだ。
 先週の時点では、財源の問題が大きかった。報告官のマルシオ・ビッタル上議(民主運動・MDB)が出した原案では、「国は歳入の15%を保健衛生に、18%を教育に割り当て、州は歳入の12%を保健衛生、25%を教育に割り当てる」という憲法上の規定を崩し、緊急支援金支給の財源にあてる予定だったが、この案はかなり不評で、立ち消えとなった。
 原案では、労働者支援金(FAT)が社会経済開発銀行(BNDES)に回す、歳入の28%(約180億レアル)を緊急支援金支給用の財源に組み込むことも提案されていたが、BNDES関係者などから強い反対が出て削除された。
 3日に承認された案は、2019年に連邦政府が提出したPECを基にしている。これは、社会保障制度改革が成立した直後に出されたもので、財政上の緊急事態が起きた時のための支出抑制メカニズムを作るために出されていたものだ。
 2020年は非常事態宣言が行われ、このPECがなくても緊急支援金を支給できたため、このPECの審議は後回しにされていた。今回は、非常事態宣言下ではないので審議の対象として取り上げられた。

 今回承認されたPECでは、通常の予算に課せられる、前年度予算にインフレ率分を上乗せという上限規定の他に、公共政策上の諸対策の経費として、最大で440億レアルまでの支出を認めている。ただし、上院での審議の段階では、緊急支援金の支給額と支給期間、支給対象についての詳細は定められていない。
 上院ではかねてから、「新たな緊急支援金の支給だけを最初に承認し、詳細は次の法案審議で決める」という分割承認を希望していた。だが、この案は「連邦予算の支出上限を破ることになる」として経財省が猛反発。
 今回のPECで承認された440億レアルは、危機的な状況に置かれ、強制支出や減免税措置、公共部門での人員採用などのための特別措置をとる必要などが生じた場合に、通常の枠の外で認められる支出をカバーするためのもので、上限法の対象外となる。ただし、この資金を利用するための特別措置を講じることができるのは国だけだ。
 3日の審議では、81人の上議中、62人の賛成(反対は16人)を得て、1回目の承認が行われた。そして翌4日、第2回目の投票が行われ、ここでも62対14で本文を承認。その後は修正動議1件を否決して、同PECの審議を終えた。
 同PECは今後、下院に送られることとなるが、アルトゥール・リラ下院議長は既に、同PECは委員会審議を行わずに直接本会議にかけるとの意向を表明済みだ。下院でPECの内容に変更が加えられるようなことがあれば、下院での審議後、上院で再度の審議、投票が行われる。
 政府支出を柔軟化させるPECは、上限法に触れずに緊急支援を行うための大前提だ。緊急支援金の支給額や支給期間、支給対象に関する詳細そのものは、連邦政府が提出する暫定令(MP)を議会が承認した時点で決まる。
 もっとも有力視されているのは、ボルソナロ大統領が既に公言している「毎月250レアルを計4回」という案で、支給人数は昨年の半分程度となる見込みだ。