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オンライン授業で生徒数が倍増!=コロナ禍でも人気のアラビア語学校

オンライン授業中のモハマドさん

オンライン授業中のモハマドさん

 「オンライン授業を導入してから、以前は1回のコースで25人くらいだった生徒数が、今年最初の授業でも50人に倍増しました。他州から参加される人も出てきて、新たな広がりを感じます」と、コロナ禍の逆境を逆手に取り、成長するアラビア語学校が『セントロ・ダ・リングア・アラベ(Centro da Língua Árabe)』だ。
 学校はメトロ・パライゾ駅から徒歩3分の便利な場所に位置し、語学だけでなく、アラブ文化のワークショップやイベントも実施できるスペースも設けられ、おしゃれなカフェサロン風に少しずつリフォームされてゆくのが印象的だ。何を商品に取り扱っても「サービス精神」が原点にあるアラブ商人のクリエイティブなセンスを感じさせる語学学校だ。
 同校の創業者であり教師を務めるのが、モハマド・アルサヘブさん(40)。シリアのダマスカス出身で、2011年に始まったシリア戦争を逃れてドバイ(アラブ首長国連邦)とベイルート(レバノン)で約3年を過ごし、2014年にサンパウロに到着した。
 ブラジル到着後は身寄りもなく、ようやく2カ月後に難民申請を行い、その5カ月後にRNA(外国人登録証)を取得し、昨年にはブラジルに帰化した。
 シリアやドバイ、ベイルートでは広告や映像コンテンツの編集の仕事に携わっていた。ブラジルでも同種の仕事を求めて就職活動したが採用されず、8カ月は無職だった。そうした中、eラーニングの会社でウェブサイトデザインの仕事を得たが、同社が半年ほどで閉鎖。
 それで、NGOジェネシス(Instituto Base Gênesis)で難民のためのポルトガル語教室に参加した後、英語を教えるボランティアに参加し、その後、難民の語学教師を養成するNGOアブラッソ・クルトゥラル(Abraço Cultural)で英語を教え始め、初めて5人の生徒にアラビア語も教えることになった。
 「私は自分の新たな能力を発見しました。皆が私のアラビア語の教え方をとても称賛してくれたからです」
 市場調査を行うと、サンパウロにアラビア語専門の学校は見つからなかった。「思いたったら即行動」がモットーで、2018年1月、『セントロ・ダ・リングア・アラベ』を設立した。
 パンデミックになるまでは教室での対面授業のみだったが、昨年3月の外出自粛が開始して10日目にはオンライン授業を導入した。「パンデミック直後は生徒が教室に来られなくなり、授業料も全額返金し、大変な状況に陥りました。新しく投資をして施設も移ったばかりだったのに」。
 当初こそオンライン授業は敬遠されたが、人々が新しい生活に慣れ始めた昨年9月ごろからは生徒が戻り始め、以前よりも生徒数が増加するという状況が訪れた。オンライン授業やSNSを通じた広報には、映像編集のプロとしてのキャリアが存分に発揮された。
 「対面授業を希望された方にも、オンラインで同等のクオリティーになるよう最善を尽くしています。全授業をビデオで見直せるなど、オンラインならではのメリットも感じていただけています」と、モハマドさんは自らのオンライン授業に自信をのぞかせる。
 オンラインにしたことで生徒本人だけでなく、隣にいる子どもが先に理解したような微笑ましい話もあった。
 モハマドさんの持ち前の前向きさと戦争体験の中で見つけた「命の価値」と隣人への思いやり。皮肉にも戦争だからこそ教えられた人生で本当に大切なものこそ、新天地での生きる力の源泉になっている。
★『Centro da Língua Árabe』(R. Afonso de Freitas, 45, Paraíso)は英語でも受講可。(大浦智子寄稿)