スプレー式のコロナ治療薬の治験交渉のためにイスラエル訪問中のエルネスト・アラウージョ外相らがマスクをはめ忘れ、「マスクをはめて!」と乞われるという失態を演じた。
アラウージョ外相を団長とする訪問団は、6日に空軍機でイスラエルに向かった。出発前、ボルソナロ大統領も交えて撮影した写真は誰一人マスクを使っていないが、イスラエル到着後の写真撮影でマスク着用を求められた。
同国外相との会見後の記念撮影の時も、カメラマンから「マスクを!」とたしなめられたアラウージョ氏が、慌ててポケットを探る様子が放映された。
国を代表する外相や訪問団がパンデミックという状況下、相手国やその閣僚への敬意やエチケットを忘れた行為を繰り返した事は、同国在住のブラジル人やブラジル国民からもひんしゅくを買った。
また、ブラジルが世界の流れに乗り遅れ、新型コロナの感染抑制に苦労している現状や、感染抑制までは時間がかかるであろう事を暗示した。
ブラジルでは、薬局や病院、スーパーなどに入る時や公共交通機関でのマスク着用が義務付けられている。マスク着用は社会的な距離の確保と共に、本人や周囲の人を守るための最も有効な方法とされている。
マスク着用を義務付けた法律は知事や議会、最高裁も認めているが、ブラジルでは大統領自らが法律を破り、支援者もそれに倣っている。
ボルソナロ大統領はイスラエルのネタニヤフ首相の信奉者だが、コロナ感染症や予防接種に関する姿勢は大きく異なる。
イスラエルは人口の53%が1回目の接種を受けており、国民も感染者や死者の減少を実感している。ネタニヤフ氏は、感染者や死者が減少し始めてレストランの営業を再開した時も、レストランで食事をし、営業再開を喜ぶメッセージを流した際、決して油断しないよう、呼びかける事を忘れなかった。
ブラジルからの外交官や訪問団は訪問先の国々の慣習なども十分に理解し、敬意を払う姿勢を崩さないなど、その伝統や専門性の高さが評価されてきた。だが、今回の訪問団は、ブラジル人の入国を認めるところならどこにでも行くボルソナロ大統領派の遠足的な目で見られている。
外相ら派遣は、鼻から吸引するスプレー式のコロナ治療薬の治験実施交渉と予防接種実施の在り方を学ぶためだ。ブラジルには統一医療保健システム(SUS)があり、形の上ではワクチンが足りないだけだが、今回の訪問では、マスク着用や握手回避、社会的な距離の確保などの大切さを学び、パンデミック抑制に役立てる事も必要だ。
イスラエル在住で18歳、2回目の接種も5日に受けたというブラジル人女性は、コロナに感染して2カ月後にしか接種を受けられない双子の兄弟以外は家族全員が接種を受けたと語った。
同国の人口は約900万人で、100人あたり98・85回分のワクチンを準備して接種を始めた。同国の予防接種キャンペーン用ビデオにはネタニヤフ氏も出て、フェイクニュースを意味するピエロらの登場人物を説得。彼らも接種を受けるという結末を見たブラジル人達は、このビデオを利用してボルソナロ大統領を揶揄している。(8日付G1サイトより)