ホーム | コラム | 特別寄稿 | 特別寄稿=ボケ予防手段としての金融投資=じっくり楽しもうマネーゲーム=悪化するボルソナロ・リスク=聖市在住 元週刊 FAXニュース代表 永井 忍=(2)

特別寄稿=ボケ予防手段としての金融投資=じっくり楽しもうマネーゲーム=悪化するボルソナロ・リスク=聖市在住 元週刊 FAXニュース代表 永井 忍=(2)

 さてブラジルは今、政治面では要注意、経済金融面では不安定になっている。
 政治面で要注意なのは、2022年大統領選を前提にした政権(大統領府)と財政健全化の道筋を策定したい経済省の間に運営と国会対策で、政権と大統領支援で国会運営の舵を握ったセントロン(中道連合)の間に、優先法案順位だけでなく条文でも統一がない。
 経済金融の安定は財政健全化に強く依存し、それは改憲を含む構造改革を抜きに実現しない。来年は選挙の年、年内に財政基盤整備を実現せねばならないが、上記のような政治局面では楽観できるはずもない。しかも大統領の決定が不安を増加した。
 政治や行政がワクチン接種を含めてモタモタする間も、コロナウィルスの変異種拡散が1日当り死亡者数最高を更新して、各州が経済活動を抑制せねばならない事態になった。経済回復はさらに遅れ、かつ鈍くなる様相だ。
 なお国際市場では2月に、全般に株価が上昇し、中国経済とともに原油など国際商品が値を回復し、金価格が下落した。ブラジルは、そのような動きに逆行して、上記の問題を主因に株価下落とドル上昇を記録した。

《1》国内の主要なリスク
 そのようなリスクに加えて、前月に対して殊に「ボルソナロ(政治)リスク」が悪化した。市場経済、自由主義の期待は一段と萎んだ。
 市場が最も警戒しているリスクは財政問題だが、それとともに市場経済向け改革推進にも注意を怠らない。その意味で、現政権への期待は2月22日に表面化したペトロブラス介入(社長人事劇)を皮切りにした一連の動きで明らかにかつ大きく萎んだ。
 その後に、リストラを推進して大統領から公然と非難を受けていたブラジル銀行頭取が辞意を表明した。ゲデス経済相を後押しする陣容が次々と崩れて、同経済相の進退に関する思惑と噂が増す状況になった。
 短期的に、ワクチン接種が遅れ、コロナウィルス感染拡大が多くの州で医療体制崩壊を引き起こす中、まず緊急支援策の財政的裏付け、財源の内容が注意を集めている。

《2》国外の主要なリスク
 リスクの上で、前月に対して目立つ変化は現れなかった。
 ワクチン接種は一部の国で前進しても、多くの国々、特に貧困国で遅々として進まず、その格差が如実になっている。コロナ禍の鎮静も遅れそうだ。経済回復が鈍って、ゼロ金利が長引くことを米FRB(中銀)が明らかにした。
 短期的に、米FRBによる金融支援の継続は市場に安心をもたらし、2月最終週に株価指数の最高値更新、さらに金価格下落となった。ただし中国経済の活性化で原油をはじめに国際商品価格が上昇して、そのニュースの度に米国で利上げは繰り上げられるという懸念が不安を喚起して長期金利を押し上げた。

《3》国内総生産(GDP)が昨年に統計最悪、4・1%減少という発表後最初の2021年マクロ経済の観測(3月5日付フォーカス)
 GDPの3・26%と鉱工業生産の4・37%成長、IPCA(インフレ)の3・98%、年末にドル相場R$5・15と4・0%のSELIC金利。前回(2月5日付)のGDPの3・47%と鉱工業生産の5・0%成長、IPCA(インフレ)の3・66%、年末にドル相場R$5・01と3・5%のSELIC金利と比較して、景気でもインフレでも明らかな悪化を示す。
 インフレとSELIC金利の予測、それにつれて金利観測が強く上方修正されたため、国債価格が軒並みに下落した。
 Tesouro Direto(国債投資)だけでなく、それを主な運用先に持つ投資ファンドも一部に赤字(元本割れ)を記録した。3月1日に政府が発表した銀行課税増加は先物金利とカントリーリスクを上昇した。
 なお次回のCopomの金利決定は3月17日だが、市場は利上げ開始をすでに見込んでいる。

《4》大統領のペトロブラス介入後も株式投資を推奨できるか

昨年4月からのIBOVESPA INDEXの値動き。昨年は上昇局面だったが、新年明けてから明らかに下降線をたどっている

 平均株価指数(Ibovespa)が2月に110・035点に4・37%も下落した。年計で7・55%の下落だ。証券取引所B3の外国投資収支は昨年10月から続いた黒字(入超)を中断して、2月は最終週の大幅赤字(出超)で月計も赤字で終えた。
 主に国内要因によって下落したものであり、3月から国内リスク、特に財政面で改善が認められるなら、今から年末にかけて株価が上がる可能性はなお残っていると考えられる。ただし、あくまで可能性であり、さらに上げ幅は各自の判断と感触による。

《5》ドル相場はどうなり、外貨建て資産は投資対象か
 外国投資家が2月にボルソナロ・リスクを改めて認識し直して、証券取引を典型的に資金を引き揚げた。ドル相場は1月ほど(5・37%)ではないが、2月も0・99%上昇した。
 ドル相場は、3月から国内リスクで改善が認められるなら、年末にかけてドルが下落する可能性はなお残っている。フォーカスの年末向けドル予測は現行水準を下回っている。

ここ3年間の為替の値動き。ボルソナロ政権1年目の2019年までは1ドル3レアル台に収まっていた。だが、2020年1月から一気にドル高に転じ、4レアル台を通り越して、5レアル台を行き来している様子

 金の価格は3月に入って1700ドルを割って魅力的だが、さらなる下落の可能性、そしてドル下落のシナリオではレアル建てでマイナス利回りになる危険を考慮せねばならない。
 なお私の金融投資の残高は2月に平均株価指数ほどではないが強く減少した。株式投資ファンドに傾斜した配分であれば当然の結果だ。1月の微減に続く不振だが、今の構成を特に変える意向はない。実質マイナスの確定利の今、なお辛抱して好機を待つ構えだ。
 債務と為替平価下落、インフレが2021年を恐慌となった1921年に接近、との指摘もある。国内外にリスクが次々と現出して、決して楽観できない事態であることは間違いない。深刻な事態なのに、行政や政治家の言動に苛立たせられることが多発している。
 そんな時ほどNetflix配給の台湾テレビ番組「一千回のおやすみを」でも観て心を静めることになる。