ポルトガルがまとめた昨年の「外国人・国境サービス」の予備データによると、昨年出た居住許可は11万7500件で、その内4万1990件はブラジル人向けだった事が明らかになった。
次はイギリス(連合王国)人の1万3160件で、以下、インド人7017人、アンゴラ人4820人、イタリア人4480人となっている。
ブラジル人が取得した居住許可は全体の36%を占め、断トツの1位。それでも、同国が新型コロナのパンデミックで苦しむ前の2019年の4万8790人よりは少ない。
同国の国家統計研究所によると、昨年の国内総生産(GDP)は前年比で7・6%のマイナス成長だった。そんな中でも、同国に住む事を希望するブラジル人は大きくは減っていない。
元教師のパメラ・フマガリ、マシャド・ダ・シルヴェイラ氏(38)によると、移住を決意した最大の理由は治安の良さと気候の良さで、ブラジル中西部マット・グロッソ・ド・スル州のプリマヴェイラ・ド・レステ市から、リスボアから約40キロのバレイロ市に移住した。
パメラ氏はイタリア国籍も持っており、夫と二人の息子(10歳と18歳)の家族4人は、欧州連合の中ならば、どこの国にでも行く事ができたが、2019年11月にポルトガルに移った。
移住当初は思うような職に就けずレストランで働いたが、夫はその後、ブラジルでも働いていたIT関連の会社に就職。パメラ氏は縫製や手工芸で収入を得ている。
移住者が母国と同じ職に就く事は決して容易ではないが、パメラ氏の場合は元々好きだった仕事と、苦にしていない。移住する事は何年も前から考えており後悔はしていないとも断言した。
ブラジル人は居住許可申請数だけでなく、既に居住している外国人の数でもトップだ。2020年の外国人居住者は66万1千人で、ブラジル人は18万3830人。この数には帰化した人は含まれていない。以下、イギリス人4万6270人、カーボベルデ人3万6600人、ルーマニア人3万60人、ウクライナ人2万8610人などとなっている。
国連によると、昨年半ばまでの数字では、ポルトガルにいる移住者は100万人余りで、総人口の9・8%に相当するという。だが、専門家はこの数字は実態を正確にとらえていないという。
パメラ氏やその夫のように在宅勤務が可能な人達はまだ良いが、ウエイターやウエイトレスといった接客業で働いていた人の場合は、新型コロナのパンデミックで失業した人も多い。
パメラ氏達は比較的安定した状態である事もあり、ブラジルに帰る事は考えていないが、失業その他で生活にも困窮している人の中には、航空便が運航していない事や経済的な困窮故に、帰国したくても帰国できないという人もいる。
ブラジルはコロナ禍で失業率が高止まりしているが、ポルトガルの公式な失業率は6・9%だ。ただし、経済活動に参加する年齢層の女性の失業率は7・1%で、平均値を上回っている。(10日付アジェンシア・ブラジルより)