
8日に最高裁のエジソン・ファキン判事が下した判断は、今後のブラジルの流れを大きく変えかねないものになりそうだ。ルーラ元大統領のラヴァ・ジャットでの裁判結果無効。これでほぼ絶望視されていた来年の大統領選への出馬資格が蘇ってしまったのだ。
これはボルソナロ大統領にとっては最悪の知らせで、労働者党(PT)や左翼陣営には大きなニュースとなった。世論調査では早速、大統領選のシミュレーションが行われ、今の時点で五分五分の結果が出ているためだ。
大統領選当選の翌年からすでに22年の選挙キャンペーンをはじめ、他の候補が誰も今もって具体的なキャンペーンさえはじめていない状況下でなら圧勝していてやっと本番が安心なところだが、現時点で早くも強力ライバルができてしまっていることになる。
また、ルーラ氏を取り巻く環境も、ラヴァ・ジャットの裁判で断念した18年より断然良い。19年のヴァザ・ジャット報道以降、ルーラ氏を断罪し英雄となっていたはずのセルジオ・モロ氏、さらにラヴァ・ジャット作戦そのものに対する神格化が崩壊した。
これにより、「ルーラ憎し」の感情がかなり緩和されてきている。そのことは19年11月の釈放判決の際にも感じられたが、今回それはより強くなっている。
ルーラ氏がこのタイミングで待望される理由は、次の3つだとコラム子は思う。一つ目は、ボルソナロ大統領がコロナ対策にあまりに無力であることだ。これまでコロナ、マスク、外出自粛、ワクチンをことごとく否定した結果、現在、世界で類を見ない死者数増を記録中だ。
これではいかに狂信的支持者が信じ続けても支持しない人はどんどん離れていくだけ。そこにブラジルの栄華の時代を作ったルーラ氏が選挙に出れるとなれば、乗り換えたくなる人もいるだろう。
二つ目は、経済面での支持者の存在だ。
現状、経済関係者には、「ボルソナロ氏は好まないがパウロ・ゲデス経済相のネオ・リベラリズムの魅力は捨て難い」と思い、それを理由に支持している勢力も少なくない。
だがゲデス氏を持ってしても経済が立て直せないのであれば、経済理論的に左派は気乗りがしなくても、「すでに実績を作ったルーラ氏なら」との考えを持っている人も少なくない。セントロンがボルソナロ氏に匙を投げれば一気になびく可能性もなきにしもあらずだ。
そして三つ目は「左派の連合」だ。ここのところ、フェルナンド・ハダジ氏、シロ・ゴメス氏、フラヴィオ・ジノ氏、ギリェルメ・ボウロス氏と新リーダー候補は出るも群雄割拠でまとまらない状態だ。
そこをルーラ氏なら一気にまとめるカリスマ性がある。これは左派にとっては非常に大きい。ボルソナロ氏にうかうかしている余裕はない。(陽)