エドゥアルド・パズエロ保健相を別の公職につかせて不逮捕特権を与えるためのボルソナロ大統領による工作のせいで、マルセロ・ケイロガ次期保健相の就任が異例の遅れを見せていたが、23日午後、予定外の就任式が執り行われた。パズエロ氏は連邦政府の官民合同投資計画(PPI)特別局に異動になる公算が高い。23日付現地紙、サイトが報じている。
心臓外科医のケイロガ氏が次期保健相への就任受諾と発表されたのは15日のことだったが、1週間以上過ぎた23日、突如、就任式が執り行われた。正式な人事異動は、23日中に号外版の連邦官報を発行し、公表される。
保健相の交代が遅れたのは、パズエロ氏に逮捕の可能性があるためだ。同氏は1月14日にアマゾナス州マナウスで発生した、酸素不足によるコロナ感染症患者の窒息死について、事前に医療崩壊や酸素欠乏の可能性に関する連絡を受けており、対処は十分に可能だったにもかかわらず取り組まなかった疑いがあり、連邦警察の捜査対象にもなっている。
ブラジルの場合、議員や大臣には不逮捕特権が与えられているが、パズエロ氏が今、保健相を辞任した場合、不逮捕特権を失ってしまう。そのため、国内外から強い社会的批判を浴びているマナウスの件で逮捕される可能性がある。
大統領としては、彼が陸軍所属であり、医療経験のないことで手腕を疑問視されていた中でも忠実に任務を遂行してくれたパズエロ氏を助けたい気持ちがあるとされている。今回、パズエロ氏の残留が長引いているのは、連邦政府内での次の公職が決まるまでの時間かせぎというのが有力な見方だ。
大統領はすでに、リカルド・サレス氏の代わりに環境相にパズエロ氏を就任させることも考えたが、この件は頓挫している。
その他に有力視されていたのは、パズエロ氏を大臣にすえるために商工開発省を復活させる、あるいはアマゾニア特別省という新しい省を作るというものだった。
だが、「新しい省を作る」というアイデアは、側近やゲデス経済相の反対にあったという。それは、「大統領の支持者に悪印象を残す」ことが考えられるからだ。ただでさえ、パズエロ氏をかくまう行為を行っていると見られている上に、ボルソナロ氏が大統領選当時から掲げていた「省庁削減策」に逆行する政策を、さらに、コロナ禍で財政が火の車の状態で行うことに対する反発が必至なためだ。
大統領はこのほかにも、大統領特別補佐官や連邦政府の特別事態対策局長なども考慮に入れているという。だが23日付G1サイトなどの報道では、経済省傘下のPPI(パートナーシップと投資プログラム)を大統領府内の特別局とし、その局長に就任させることになりそうだ。この場合はオニキス・ロレンゾーニ大統領府総務室長官の管轄になるので、大臣級の人事とはならない。
一方のケイロガ氏は、企業の共同経営者であることが明らかとなり、これを手放す必要に迫られていた。企業所有者は政府の公職に就けないためだ。
23日に行われた就任式に関する記事では企業との関係を切ったかについての言及はない。事前の情報では24日か25日とされていた就任式が前倒しされたのは、24日に予定されている三権の長によるコロナ対策に関する会議に、正式な保健相として参加させるためだと見られている。
コロナ禍で世界最悪レベルの死者、新規感染者が発生し、医療崩壊が進んでいる最中に起きていた保健相人事を巡る混乱は、ボルソナロ大統領に対する新たな批判の火種にもなっていた。