ジョイセ・ハッセルマン下議(社会自由党・PSL)は22日、「大統領が精神に障害をきたし、正常な判断が不能な状態に陥った場合に更迭できる」とする憲法補足法案(PEC)の提案を行った。23日付現地紙が報じている。
ジョイセ氏自身によって「精神障害PEC」と名付けられたPECにはボルソナロ大統領の名前は一切書かれていないが、ボルソナロ氏にあてつけたものであることは明確だ。ジョイセ氏は2019年、連邦議会の政府リーダーをつとめていたが、大統領と強く反目し、役目を外された。それ以降、ジョイセ氏は保守派内での反大統領派として知られている。
このPECによると、精神障害による大統領更迭は以下の手順になる。まず、副大統領と閣僚の4分の1以上が連名で下院議長と上院議長に「大統領が正気を失い、執政できる状態でない」ことを報告。それが受理されると、大統領は15日の間に異議を申し立てることができるが、その間は職務に就くことはできなくなる。上院、下院はその後、更迭するか否かもどうかも含め、最長30日間かけて審議する。投票は記名式で、3分の2以上の賛成があれば、更迭が成立する、というものだ。
ジョイセ氏によると、このPECは今年の1月6日、米国で起こったトランプ氏支持派による連邦議事堂襲撃事件で、トランプ大統領(当時)の罷免問題が浮上した際、適用の可能性を指摘された合衆国憲法改正25条を参考にしたものだという。 「わが国の憲法では、大統領の精神状態を問う条項が欠けている」と、ジョイセ氏は提案の根拠をあげている。
ジョイセ氏はさらに、「ブラジルには古くからこうした問題が起こっている」とし、独立前の1808年にブラジルに逃亡し、8年間、ブラジルに住んだ後、精神状態に異常をきたし、ブラジルで死亡したポルトガルの女王、「狂女王ドナ・マリア」ことマリア1世の例も出している。
ジウマ大統領の罷免嘆願書を作成したことで知られる法学者のミゲル・レアレ・ジュニオル氏は昨年、ボルソナロ氏がコロナ禍の中で反連邦議会、反最高裁デモを挑発した件について訊かれた際、ボルソナロ氏が精神的に執務できる状態にあるのかに疑問を呈する発言を行っている。