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再選に前途多難なボルソナロ

24日のボルソナロ大統領(Marcelo Camargo)

24日のボルソナロ大統領(Marcelo Camargo)

 次の大統領選まで、まだ1年半近くあるが、現状でボルソナロ大統領の状況は日に日にかなりきつい状況になっていると言わざるをえないだろう。
 その一番の理由はなんと言ってもコロナ禍での死者激増だ。その数はついに30万人を突破した。さすがにこの数字は、妄信的な支持者がいくら擁護しようが、冷静に受け止められる人が激減しても仕方がない。その数や世界第2位。かなりわかりやすい数字だ。
 1位の米国の55万人を抜くことはないと信じたいが、ここ数日はそんな米国よりもブラジルの方が1千〜2千人も、1日あたりの死者数が多い。アメリカでの現状の死者数減少傾向から考えて、その差もだいぶ縮まることが予想される。
 二つ目にはルーラ元大統領の大統領選出馬の可能性浮上。8日にラヴァ・ジャット裁判での有罪を無効にされて以来、ルーラ氏待望論が俄然活気付いている。世論調査を見ると「出馬は反対派が上回る」などの報道もされているが、実刑判決を受けた当時ほどの強い反発は感じられない。
 むしろ「反ボルソナロ派にとっての希望の候補」としての期待感の方が、反ルーラ派の慎重なマスコミ論調を上回っている感じさえする。すでに出ている大統領選シミュレーションでもルーラ氏は互角以上。最高裁が出馬を無効にしない限り、期待感は上がっていきそうだ。
 三つ目には、「トランプ氏の不在」。これがじわりじわりと効いているように思う。米国大統領選でトランプ氏が敗れた直後、ボルソナロ氏の支持者は「他の国は関係ない」との楽観も見られた。
 だがいざバイデン政権がはじまってみると、以前のようなトランプ氏に煽られた支持者たちの外出自粛を挑発するような行為の報道も激減。ボルソナロ氏の言動に共鳴する他の国の首脳も現れず、国際的に孤立した状態となっている。
 長い目で見れば、この「極右の時代気分の後退」が、ボルソナロ氏に最もダメージを与えそうな気がコラム子にはしている。
 そして四つ目は「セントロン」の存在だろう。目指す政治的志向性が明確に違いながらも、ボルソナロ氏が自身の罷免を避けるために近づいた議会多数派の中道勢力のセントロンだが、任期を1年半以上残している現在、もう不和の声が聞こえてきている。
 元々が「イデオロギーは置いておいて実務優先」なセントロンが、イデオロギーを実務そっちのけでこよなく愛すボルソナロ氏と長く持つとはかねてから思えなかった。
 だが、今から不和では、今年中この政権が持つかも怪しい。選挙年に対立するなら、「せめて任期が終わるまでは」ということにもなるが、まだ時間がある。 なら、何か致命的問題が起これば「ならば罷免」ということにもなりかねない。
 もっともボルソナロ氏は現在無所属。セントロンに抜けられると、議会内での支持勢力も罷免阻止の3分の1以上に行くかどうかはかなり怪しいのだが。(陽)