新型コロナの感染再燃と緊急支援金の支給再開の遅れ、物価高が貧困家庭をより困難な状況に追い込む中、貧困者が約3倍に増えた事が分かった。食の危機に直面する人が増える中、全国規模で救済キャンペーンも行われていると5~7日付現地サイトが報じた。
貧困者3倍増の実態はジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)の調査で明らかになった。同財団によると、2月現在の貧困者は2700万人で、昨年8月の950万人の2・84倍となった。同じFGVが今年リオで行った同種の調査では、一カ月の生活費が246レアル(約4800円)以下の人を貧困者と定義している。
しかも、肉や米、大豆油といった基礎食料品を中心とする物価高は高進中で、失業者や零細・個人企業家も含む貧しい人達の懐を直撃する。所得が減った上に物価高で購買力が落ちているのだから、泣き面に蜂だ。
6日に発表された食の安全と栄養に関する調査結果によると、昨年12月までの3カ月間に何らかの形で食の安全が脅かされ、カロリーや栄養素も含めて、適切な食事がとれていない家庭は全体の55・2%(1億1680万人相当)に及び、9%にあたる1900万人は飢えに悩む状態に置かれていたという。
飢えに悩む人が1900万人という数字は2009年の調査時の倍で、2004年並みだという。同調査は昨年12月5~24日に2180世帯を対象に行われた。
この時点ではまだ、緊急支援金が支給されており、その後の状況はより厳しくなっている。
「食と栄養の安全保障に関する研究ネットワーク(Rede Penssan)」のレナト・マルフ会長は、新たな緊急支援金支給は現状に即しておらず、政策上の問題とし、学校での給食支給は従来通りの基準で継続する事や、家族農の人達からの食材購入などを勧めている。
マルフ氏によると、食の安全が特に脅かされているのは、黒人または褐色で学歴の低い女性が家計を支えている家庭だ。
女性が家計を支えている家庭では、飢えに悩んでいるが11・1%、食の安全に不安ありが15・9%あった。男性が家長の場合は、どちらも7・7%だった。肌の色で見ると、黒人系は10・7%が飢えに悩んでいるが、白人は7・5%。食の安全に不安ありも、黒人13・7%、白人8・9%だった。
地域別にみると、北部では18・1%、北東部では13・8%が飢えに悩んでおり、全国平均の9%を大きく上回る。他の地域は5~7%だが、人数で見ると、南東部と北東部は700万人ずつでほぼ同数だ。
パンデミックで食の安全に不安が生じているのは貧困層だけではなく、一人当たりの所得が最低賃金(現在は1100レアル)超の家庭でも、多少なりとも食の安全が脅かされているが34・7%あった。2年前は20・7%だった。
1993年から食の安全確保に取り組んでいるアッソン・ダ・シダダニアやスラムの飢餓対策に取り組むファヴェーラ統一センター(Cufa)などの諸団体、メディアなどは、パンデミックで苦しむ家庭支援のため、全国規模で募金や食料配布などを行っている。
★2021年4月8日《サンパウロ州》予防接種会場で食品寄付募る=失業などで苦しむ人々支援のため
★2021年3月19日《ブラジル》1日1食も満足にとれないスラム住民増加=パンデミックで寄付が激減
★2013年10月3日《ブラジル》飢餓人口は1360万人=生産性向上などで大幅改善=世界では今も8人に1人