3月31日、前日に3軍の司令官たちを解任したことによって、1964年の軍事クーデター記念日に「軍を味方につけ、独裁制を興すのではないか」と噂され恐れられたボルソナロ大統領。
それに対抗して、22年の大統領選への出馬が予想される6人の政治家たちがボルソナロ氏に対し、「民主主義の遵守」を訴える声明を発表した。
この6人とはジョアン・ドリア聖州知事、エドゥアルド・レイテ南大河州知事(ともに民主社会党・PSDB)、ルイス・エンリケ・マンデッタ元保健相(民主党・DEM)、ジョアン・アモエド(ノーヴォ)、ルシアノ・フッキ(無所属)、そしてシロ・ゴメス氏(民主労働党・PDT)の6人だ。
この声明そのものは意義のあることだったと思う。これまでのブラジル政治は「保守対左派」の対決が、保守の担い手が代わったとはいえ、もう30数年来続いたものとなっている。その二項しかないと思われがちなところに、「もうひとつ別の選択肢」が世にあることを改めてアピールするのは、現時点でのインパクトは薄いかもしれないが後々効いてくると思う。
だが、「それがこの6人の間で機能するか」ということになるとコラム子はやや疑問だ。
まず、ひとつはシロ氏と他の5人が合うとは思えないことだ。ルーラ氏に出馬の可能性が高まっていることで左派票が一気に奪われることが予想されるシロ氏としては中道、右派票が欲しいところである。
だが、「ルーラ氏の不正疑惑」を嫌ってシロ氏を支持するタイプは人権問題などにはよりうるさいタイプの人も少なくなく、18年の選挙でボルソナロ人気の尻馬に乗った政治家のことを嫌いがち。また、保守寄り、財界寄りの人たちにはシロ氏の経済モデルは左派的すぎ。折合うポイントが見えにくい。
では、「他の5人ではどうか」となると、これも難しい。彼らが得たい支持としては「ボルソナロ政治に失望した福音派や財界人」となるが、この5人の中には福音派が誰もいない。財界ということでいうなら企業家出身のドリア氏とアモエド氏だが、「商売人」ではあっても金融や市場の人ではないのが気になるし、企業家の場合は拒否反応を示す向きも少なくない。
一方、「イメージの良さ」でいえば、マンデッタ氏、フッキ氏、レイテ氏は有利だと思う。マンデッタ氏は保健相時代のコロナ対策のリーダーシップ、フッキ氏はテレビ司会者としての親しみがある。
だが、コラム子が大穴だと思うのはレイテ氏の存在だ。36歳にして南大河州のような大きな州の知事をつとめ、カルドーゾ元大統領のお墨付きがある。
そこに加えて同氏の場合、その甘いマスクで既に女性ファンが多い大衆性も武器になりそうな強みがある。またPSDBの中では左派寄りで人権問題や格差是正にも熱心とも言われており、左派も味方につけられる可能性もある。惜しむらくは大統領のポストにはまだ若すぎることだ。(陽)
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