ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》最高裁がコロナ禍責任追及上院委員会の開設を命令=連邦政府に痛手で怒り心頭の大統領=「ミサ開催の自由」も撤回

《ブラジル》最高裁がコロナ禍責任追及上院委員会の開設を命令=連邦政府に痛手で怒り心頭の大統領=「ミサ開催の自由」も撤回

最高裁前(Marcello Casal)

 最高裁は8日、前日に引き続き、カシオ・マルケス判事が3日に下した、コロナ禍における信者が参加しての集会開催を認める仮判決に対する審理を行い、判事投票2―9の圧倒的大差で、仮判決を却下することを決めた。また、ルイス・ロベルト・バローゾ判事は上院に対し、コロナ禍における連邦政府の対応とその責任を問う議会調査委員会(CPI)開設を命じた。8、9日付現地紙、サイトが報じている。
 この審理は、もともとは社会民主党(PSD)が、サンパウロ州政府が紫レベル実施に際して、宗教施設内での集会開催を禁じたことに反対し、集会再開を認めるよう求めた訴えに応じたものだ。これに関しては、ジウマール・メンデス判事が5日に再開を認めない判断を出している。
 7、8日の審理は、この件の全体審理であると同時に、カシオ判事が3日に出して物議を醸した、信教の自由と集会開催に関する全国福音派法律家協会(Anajure)の訴えに対する仮判断に関する審理でもあった。カシオ判事の仮判断は復活祭の前日に出されたため、収容人数の25%という規定付ではあっても、教会で集まりたいと願う信者を喜ばせたが、コロナ禍が深刻さを増す中で感染を拡大させる行為として問題視された。
 7日の審理は、報告官を務めたメンデス判事の投票のみで終わっていた。この投票の際、メンデス判事は、ブラジル国内で感染者、死者が増える主要要因となっている「否定論」を痛烈に批判し、カシオ判事の判断取り下げを訴えた。
 8日に行われた審理では他の判事たちもこぞって否定論を批判し、1日の死者が4千人を超すほどになっている状況の切実さを訴えた。メンデス判事の票には、アレッシャンドレ・デ・モラエス、エジソン・ファキン、カルメン・ルシア、リカルド・レヴァンドウスキー、ローザ・ウェベル、マルコ・アウレーリオの各判事とルイス・フクス長官が賛成を示し、9票を獲得した。

 これに対し、国内のキリスト教信者の多さと信教の自由を集会開催を認める理由にあげたカシオ判事への支持は、ジアス・トフォリ判事のみに終わった。トフォリ判事も支持の理由を明確には説明せず、援護射撃はしなかった。
 カシオ判事の仮判断の撤回は、連邦政府の敗北も意味する。PSDの起訴内容に関しては、共にボルソナロ大統領の指名で現職に就任しているアウグスト・アラス連邦検察庁長官と、アンドレ・メンドンサ国家総弁護庁(AGU)長官の2人も、信教の自由を認め、集会開催を認めるようにとの意見書を提出していた。メンドンサAGU長官に至っては、7日の審理の場で「信者たちは信仰ゆえに死ぬことも辞さない」と語り、別判事から「他者を死に至らしめる権利はない」と叱責される場面まであった。
 そこに追い討ちをかけるように同日、バローゾ判事が上院に対して、コロナ禍における連邦政府の対応とその責任を問うCPIを開設する命令を出した。これは1月14日にアマゾナス州マナウス市で起きた酸素不足による窒息死発生を機に、同州での医療崩壊に関して、保健相をはじめとする連邦政府の責任を問うために、1月15日に開設を要請したが、上院議長が取り上げようとせず、上議たちが最高裁に訴えていたものだ。
 このCPI開設は、ボルソナロ大統領が何としても避けたがっていたもので、命令決定後の8日、大統領は「今の時期にCPIを開設するのは道義的におかしい」「州知事たちの責任は問われないのか」と強い剣幕で語り、バローゾ判事を批判した。
 他方、ロドリゴ・パシェコ上院議長は、この突然の命令に「気は進まない」としながらも「命令は尊重する」との見解を示した。バローゾ判事の命令は、同判事が要請していた以上の署名が提出されたことを受けて出されている。