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《ブラジル》大統領「最高裁判事を罷免で脅せ」=上議が通話内容公開して波紋呼ぶ=コロナ禍CPIを潰す目的で

カジュルー上議(Senado)

 11日夜、上院議員のジョルジェ・カジュルー氏(シダダニア)がボルソナロ大統領との通話内容を公開し、大波紋を呼んだ。それは、上院でのコロナ禍に関する議会調査委員会(CPI)開設を止めようとした大統領が、CPIの立ち上げなどを命じた最高裁判事たちへの罷免請求を行うよう同上議に迫る内容だったためだ。12日付現地紙が報じている。
 この録音はカジャルー氏自身が11日にネット上で公開したもの。対話は10日に行われた。
 ボルソナロ氏はカジュルー氏に対し、「あなたはレモンからレモネードを作らなければならない」と語り、「最高裁判事の罷免請求を出すんだ」と語った。さらに、「それが起これば、彼ら(最高裁)だって考えを変える。コロナ禍での政府の責任を問うCPIもなくなり、最高裁判事に対する捜査だってなくなる」と語った。
 カジュルー氏はこの日、ロドリゴ・パシェコ上院議長に対して、最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事の罷免審理を全体審理にかけるよう動いていた。CPI開設を命令したのはルイス・ロベルト・バローゾ判事だが、モラエス判事は「反連邦議会・最高裁」の反民主主義的行為、そしてフェイクニュースに関する連邦警察の捜査の最高裁での担当者だ。この行為に対して、ボルソナロ氏は「よくやった」とほめている。
 ボルソナロ氏は11日、バローゾ判事に対しても、「CPI開設は国民からの罷免の嘆願対象となり、上院で裁かれるぞ」と脅す言動を行っている。

 この電話でボルソナロ氏は、「このままだとCPIは(アマゾナス州マナウスでの医療崩壊の責任を問われている)パズエロ(前保健相)だけを責めるものになる」と不満をしめし、「(大統領がコロナ対策をめぐり常に対立している)州知事や市長などにも対象を広げるべきだ」「死者が多いのは知事や市長たちの責任だから、知事や市長も対象にするべきだ」とも語っていた。
 この会話はカジュルー氏自身によって11日夜に公開されるや否や話題を呼び、この日に放送されたグローボ局の報道番組「ファンタスチコ」にも緊急で取り上げられて話題を広げた。カジュルー氏によると、通話内容を公開する前、大統領と連絡を取り、通話内容を録音していたことや公開する意向であることを告げたが、大統領は反対しなかったという
 この報道を受け、ボルソナロ氏は対話があったことを認め、「すべての部分の公開を行うべきだ」と主張した。翌12日にカジュルー氏が公開した残りの部分で語られていたのは、上院の野党リーダー、ランドルフ・ロドリゲス上議(レデ)を批判し、同上議に暴行を加えると脅す内容のみだった。大統領はこの部分で、「お前がCPIに参加しなければロドリゲスが参加し、頭痛の種となるはずだ。そうなったら、俺が出て行ってあいつとやり合わなければならなくなる」と語っている。
 CPI開設に関しては上院内でも当初、「パンデミックが最悪な状況の今、時期的に不適切」とする意見が目立ち、開設に消極的だったが、この通話漏洩で事態は複雑化。大統領は知事や最高裁判事を脅迫し、最高裁判事への罷免請求まで強要しているとし、改めて「CPI開設は不可欠」と説く上議も出ている。
 最高裁のルイス・フクス長官は12日、このCPIに関する全体審理を行うことを決めている。最高裁判事のひとりは今回の件を、「偶然に起こった会話でなく、計画して行われたものだろう」と批判している。
 市長たちも12日、知事や市長への調査は「大統領が張った煙幕」との見解を表明。「CPIの対象を広げても何の心配もない」としている。