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《ブラジル》ルーラ氏大統領選出馬が正式可能に=最高裁投票8対3で決定=ボルソナロは平静を装う

ルーラ(Daniel Mello)

 15日に最高裁で、エジソン・ファキン判事がルーラ元大統領に対するラヴァ・ジャット(LJ)裁判の判決を無効化した仮判断に関する全体審理が行われ、8対3で仮判断が支持された。これによって、現状ではフィッシャ・リンパ(犯罪歴なし)となったため、ルーラ氏は2022年の大統領選への出馬が正式に可能となった。16日付現地紙が報じている。
 今回の審理は、3月8日にファキン判事が下した、ルーラ氏が抱えた四つの裁判を既に判決が出たものも含めて無効とし、パラナ州クリチバのLJ特捜班の管轄から外す、という仮判断に関するものだ。
 最高裁LJ担当であるファキン判事がそのような判断を下した理由のひとつは、パラナ州という地域と、これらの裁判の容疑と贈収賄工作の温床であったペトロブラスとの直接的な関連性が見出せなかったことだ。
 さらに、19年6月に報道された、携帯電話のハッキングの内容からセルジオ・モロ担当判事(当時)がパラナ州検察局のLJ班と違法な謀議を行った疑惑が生じたことも影響した。
 ファキン判事としては、最も物議を醸したルーラ氏の裁判を無効にすることで、モロ氏を救いたいところだった。だがモロ氏は3月15日に、最高裁第2小法廷の審理で、「ルーラ氏の裁判には偏りがあった」との判決を受けてしまった。
 8日のファキン判事の判断を不服とした連邦検察庁が控訴したため、この日の審理となったが、第2小法廷でのモロ氏への判決はここでも響いた。報告官のファキン判事が改めて主張した「ペトロブラスとの関連がない」という主張に、アレッシャンドレ・デ・モラエス、ジアス・トフォリ、ローザ・ウェベル、ジウマール・メンデス、リカルド・レヴァンドウスキー、カルメン・ルシア、ルイス・ロベルト・バローゾ判事が賛成。8票を獲得した。

 一方、反対はカシオ・マルケス、マルコ・アウレーリオ・メロ、そしてルイス・フクス長官の3人のみだった。フクス長官はハッキングされた電話の中でモロ氏から「イン・フクス・ウィ・トラスト(フクスさまさま)」と呼ばれたほど、LJ支持派として知られていた。
 ルーラ氏にとっては、18年の大統領選断念の理由となり、3審まで有罪だったサンパウロ州グアルジャーの高級三層住宅を介した贈収賄と資金洗浄疑惑、2審まで有罪となったサンパウロ州アチバイアの別荘改築を介した贈収賄と資金洗浄疑惑の判決の無効化が確定した。
 フィッシャ・リンパ法では、2審以上で有罪となった場合は刑期終了後も8年間は出馬できないと規定されており、同法の規定上、フィッシャ・リンパ(キレイな経歴)となったルーラ氏は22年大統領選への出馬が可能となった。
 ただ、ルーラ氏は完全に無罪になったわけではない。ファキン判事はサンパウロ市イピランガ区にあるルーラ研究所建設をめぐる二つの疑惑での贈収賄と資金洗浄の嫌疑の裁判を含む四つの裁判は、パラナ州連邦地裁が扱う範疇の裁判ではないと判断し、パラナ地裁での裁判とその後の2審、3審は無効と判断したのであり、裁判そのものは、別の裁判所に場所を変えて、継続される見込みだ。
 ファキン判事はルーラ氏の裁判をブラジリアの連邦地裁に回すよう指示したが、一連の嫌疑はみな、サンパウロ州で起きたものであることから、サンパウロ州地裁で継続されることも予想される。ルーラ氏の裁判再開は早くても22年1月と見られており、大統領選が行われるまでにフィッシャ・リンパ法に抵触する「2審での有罪」になることは不可能な状況となっている。
 22年大統領選に手ごわいライバルができたことになったボルソナロ大統領は、審理直後の恒例ライブで、予想されるルーラ氏の大統領選参加に反対することもなく、「ルーラ氏が大統領選に出馬して私に勝ったら、監査可能な投票形態である場合に限り、負けを認める」と語った。