パラグアイ宇宙機構(AEP)が、日本のJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と九州工業大学との共同で、パ国初の人工衛星「Guarani SAT-1」を開発し、2月20日14時36分に打ち上げ成功して国際宇宙ステーションに運ばれた。3月14日午後8時過ぎには日本実験棟(国際宇宙ステーション)「きぼう」から宇宙空間に放出され、地球を回る軌道に乗り、人工衛星からパラグアイへの通信が開始された。
「今回の人工衛星は、パラグアイ初ということもあり様々な期待とプレッシャーがありましたが、無事打ち上げと交信ができて本当によかったです。これからも開発を軸に日本とより深い交流深めていきたい」――今回、人工衛星の開発に携わった一人、パラグアイ宇宙機構(AEP)指導官及び国立アスンシオン大学の栗田ホルヘ教授(パ国二世・47歳)は、そう笑顔で語った。
このプロジェクトで開発に協力した九州工業大学は、新興国の留学生への指導を通じ宇宙開発に係る人材の裾野を広げる「BIRDSプロジェクト」を実施しており、今回もその一環だ。
同大学の趙孟佑教授と栗田教授が監修し、パラグアイから九州工業大学へ留学した2人(アスンシオン国立大学卒業生で現AEP職員)や、同大学の日本人学生が開発に挑んだ。
JICAは今回の開発の成功を節目に、同国での農牧業で人工衛星利用の促進を目的として、長期研修員として、同工業大学に派遣中だ。
今回2年の時間を要し開発に成功した「Guarani SAT-1」は、10cm四方の小型のもの。打ち上げ後は同国の地上の各種データの収集やシャーガス病(寄生虫による感染症)の感染源であるサシガメの生息状況、農林水産業の開発のための調査に活用する予定だ。
栗田氏は「今回パラグアイ初だったので、少ない予算で行うことや、政府へその必要性、農業調査を通じた一般市民への恩恵などを理解してもらうことが一番苦労しました。日系人として、日本と協力して開発することも失敗できないので、良いプレッシャーでしたね」と苦労を語る。
打ち上げと初めての通信については、「打ち上げ時、開発に携わった関係者らとオンライン中継で見て感動しました。残念ながらコロナの影響で、打ち上げ地である現地アメリカに渡航はできませんでしたが、お祝いのメッセージも各方面からきて本当に嬉しかったです。それより嬉しかったのが、その後の衛星軌道に乗って初めて通信が届いた時です。宇宙からの通信が地球に届いて初めて成功といえるため、嬉しさと安堵感が何よりも溢れました」と笑顔を浮かべる。
栗田氏は、「今回の成功で、次の人工衛星を開発するハードルがぐっと下がると思います。これまで南米では唯一パラグアイだけが人工衛星を開発していませんでしたが、これで他国と肩を並べることができます。これからは他国を追い抜くぐらいの開発をし、パラグアイ市民にその恩恵がくるようにしたい。より日本とパラグアイの交流が深まるように、50人、100人と日本へ留学生を送りたい。ご協力いただいた皆さん本当にありがとうございました」と今後の目標を語り深謝した。
JICAパラグアイの池上恵美次長は、「今回、日本とパラグアイが共同で開発したことは歴史的な事だと感じています。両国の関係が発展できるようJICAも引き続きバックアップしたいです」と語った。
人工衛星の放出は、宇宙飛行士野口聡一氏により操作が行われた。
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