南米南部共同市場(メルコスル)の財相や外相が26日に共同市場評議会を開催し、対外共通関税率(TEC)の引き下げなどについて話し合ったと27日付ブラジル国内サイトが報じた。
メルコスルは1991年3月26日発効のアスンシオン条約により、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの4カ国の貿易同盟として発足。1995年1月からは関税同盟となり、全ての加盟国が他国からの輸入品にTECを課すようになった。
現在は、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、ペルー、スリナムが準加盟国として参加。他方、ベネズエラは2017年以降、無期限で参加資格停止となっている。
今年はアスンシオン条約発効から30周年で、記念日から1カ月遅れの26日に財相や外相による評議会が開催された。
27日の経済省の発表によると、今回の評議会には、アラウージョ氏に代わって就任したカルロス・フランサ外相とゲデス経済相が参加。ウルグアイが提案したTECを20%引き上げる案などが協議されたという。
ゲデス経済相は23日に上院で開かれたメルコスルに関するセッションに招かれ、メルコスルの基準に柔軟性を持たせ、TECを引き下げるべきだとし、ブロックの枠にとらわれず、各国が域外諸国との貿易協定を結ぶ自由を認めるべきとの考えも表明した。
同相は同時点で、TEC引き下げるのが困難な国もある事を認め、他国にも無理がない範囲という意味で、10%の引き下げを求める意向である事を明らかにしていた。
メルコスルの基準に柔軟性を持たせる必要は3月の首脳会議でウルグアイのルイス・ラカジェ・ポー大統領も主張しており、26日の会議では同国代表がTECを2段階で20%引き下げる事を提案。10%は即刻、残り10%は年末までに引き下げるもので、現在は関税率10%の品は、年末には8%課税となる。
現時点ではブラジルはこの案に賛同したが、アルゼンチンは反対で今後の協議が待たれている。
他方、ゲデス氏が主張していた各国が個別に貿易協定を結ぶ事を認める自由に関しては、他の参加国も好意的な反応を示した。ブロック単位での貿易協定という基準に柔軟性を持たせる可能性が出ているようだ。
ゲデス氏はブロック単位で他の経済域との貿易協定を締結する事の重要性を認めつつ、各国の関心や需要、生産力は異なるから個別の貿易協定締結も認めるべきと主張。ブラジルは現在、カナダや韓国、日本などとの貿易協定締結を望んでいる。
ただし、メルコスルと欧州連合との自由貿易協定締結への動きはブラジルでの森林伐採増加などが足かせとなり、未完結だ。
専門家はメルコスルの基準に柔軟性を持たせ、個別の貿易協定締結を認めた場合は、域外諸国との貿易の活性化が可能となる一方、アルゼンチンでのチリの重要度が増すと見られるなど、長短両面があると見ている。
次回の共同市場評議会は、5月にブエノスアイレスで開催される。
★2005年5月12日自由貿易協定を締結=メルコスル湾岸諸国=3年で貿易倍増へ
★2019年7月2日《南米共同市場・メルコスル》EUとの自由貿易交渉で合意=巨大市場への輸出に恩恵=正式調印には議会の承認必要=「歴史的」とボルソナロ大統領
★2019年11月15日BRICS会議=中国と自由貿易交渉開始か?=ゲデス経済相が意欲見せる=手のひら返すボルソナロ=メルコスルとの関係がカギ