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《ブラジル》初の純国産ワクチンを製造開始=監督庁の承認を待たず強行

ブタンバック(Twitter)

 サンパウロ市ブタンタン研究所が28日から、ブラジル初の国産コロナワクチンとなる「ブタンバック」の製造を開始した。同ワクチンは現在、人体での治験許可をめぐり国家衛生監督庁(ANVISA)と交渉中で、ANVISAからの治験許可さえ出ていない内に量産を開始した形となった。29日付現地紙が報じている。
 ブタンタン研究所は、現在の国内のコロナワクチンの75%を占めている中国製「コロナバック」の治験と国内生産を担当しているが、コロナバックは有効成分を中国から輸入しており、供給の遅れに四苦八苦している。
 これに対し、ブタンバックは中国からの原材料輸入を必要としないため、ブラジル国内で安価大量生産と自給が可能なワクチンとして注目を浴びている。
 28日、ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事は記者会見を開き、「今日はブラジル並びに世界の科学にとってきわめて重要な日だ。サンパウロ州は今日からブタンバックの製造をはじめた」と発表した。
 ブタンタン研究所は26日、ANVISAに対して、第1、第2段階の人での治験を行うための許可申請を行った。同研究所によると、第1、第2段階の治験は1800人、第3段階の治験は9千人が参加する予定だという。

 これに対してANVISAは翌27日、「より詳細な資料が欲しい」と態度を保留していた。ブタンタン研究所は120日以内に要請された資料を提出する必要があるが、今回のブタンバックの製造は、ANVISAの要請を押し切った上、治験さえ行わない段階での量産行為となる。
 同研究所のジマス・コーヴァス所長は、「そもそもの申請なら3月26日に行っている。ANVISAから来た質問は製造過程に関するものばかりで、学術的なことに関してのものではない。ANVISAには迅速性が必要だ。我々はいかなる質問にも速やかに回答できる」とし、要請された資料もすぐに整えるとの意向を表明した。
 ドリア知事は「6月半ばまでに1800万回相当分のブタンバックを生産する予定だが、これらを実際に使用するか否かはANVISAが承認するか否かにかかっている」と付け加えた。
 ブタンタン研究所によると、2021年中には4千万回分のブタンバックを作る予定でいるという。

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 サンパウロ市内で29日から、63歳の人たちを対象としたコロナワクチンの接種がはじまっている。同市内には63歳の人が多く、11万6千人に上るという。これに伴い、休止していた市内20カ所のドライブスルー接種場も運営を再開。29日は早速、長蛇の列ができていたが、5月1日のメーデーと2日の日曜日は同接種場は休みとなり、3日から運営を再開する。サンパウロ市では保健所(UBS)など485の保健機関でも接種が受けられるが、UBSは土日や休日が休みのところが多いので、市役所サイトで接種可能な会場の確認を。5月6日からは60〜62歳(140万人)への接種もはじまる。この年齢層が終わると、妊婦や慢性疾患のある人などを経て、60歳未満の人への接種に移る。ワクチンへの関心も高まりそうだ。