ブラジル北東部バイア州都サルバドールで4月26日、スーパーで肉を盗もうとして警備員に捕まった男性2人が数時間後に遺体で見つかるという事件が発生した。4月30日付フォーリャ紙サイト、5月1日付G1サイトなどが報じている。 コロナ禍によって貧困層が3倍に激増する異常事態の中、国民の半分が適切な食事とれず9%が飢餓状態なのに、ただ肉を食べたいだけの貧乏人が見せしめのようにマフィアに殺されるという惨事がおきた。
4月26日の事件はサルバドール市アマラリナ区の「アタカレジョ」という店で起きた。5キロ入りの肉の包み4個を盗もうとしたブルーノ・バロス・ダ・シウヴァ氏(29)と甥のイアン・バロス・ダ・シルヴァ氏(19)が警備員らに現行犯として捕まった後、少し離れたブロッタ区に放置された車のトランクから射殺体となって見つかった。遺体には虐待の跡もあった。
事件後には、スーパーの一隅で肉の包みを前に座らされている二人の写真がネット上で流れた。遺族達は、警備員達が二人をアマラリナ区を取り仕切っている犯罪組織に引き渡したため、見せしめのために虐待、射殺されたと見ている。
遺族達は「盗もうとした事は間違いだが、その場合は警察に引き渡すべきだ。正当な裁きを望む」「家が貧しいのを知っているから、肉を食べたくても親には言えなかった子を、こんな形で殺すなんて」と語り、嘆いている。
遺族の一人は、ブルーノ氏が友人に送った音声メッセージを公開。そこには、「肉代を払うために700レアルを調達してくれ」と頼む声が録音されていた。
バイア州市警は4月30日に、スーパーは被害届を出していない事や、捜査は進行中で、犯人特定は間近との見解を明らかにしたが、捜査の途中だから詳細は語れないとした。同州議会人権委員会はこの件を重く見て、真相解明を求めている。
ブルーノ氏とイアン氏の遺族達は4月30日に同州検察局の前で抗議行動を行った。
なお、この事件の報道後、昨年10月に盗みを働こうとして友人2人と共に同じその店に行ったが、前科があったために警備員に見つかって逃げ出したという15歳の少女が、一部始終を告白した。
警備員達が近づいてくるのに気が付いた少女達は逃げたが、この少女は捕まり、「ノルデステ」と呼ばれる犯罪者集団に引き渡された。ノルデステのメンバーは10~15人おり、少年も混じっていたという。少女は銃の台尻で何度も殴られた上、腕に切り付けられたり、金属の棒で腕に刺されたりしたという。
犯罪者達は傷ついて血を流している少女の写真も撮り、ネット上に流したが、少女自身は隙を見て逃げ出して殺されずに済んだ。
この少女は逃げおおせた後も、見つかって殺されるのが怖くて、警察には届け出なかった。だが今回の事件の報道を見て、思い切って事の次第を語る事を決めた。自分が捕まって虐待された時の記憶は常に恐怖心を呼び起こし、トラウマに陥っているという。
アタカレジョ側は「法に触れるような行為には加担していない」とし、肉を盗もうとして殺された男性達の件は警察の指示に従い、内部調査を行う意向を表明した。
パンデミックによって寄付が激減したことにより、多くのスラム街では1日1食も満足にとれない住民増加しているとの報道もでている。
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