ブラジルでの新型コロナ感染第2波は一時ほどの勢いを失い、米国の大学が立てた4月に10万人死亡という最悪のパターンには至らなかったが、4月の死者は8万2266人となり、3月の6万6573人を大幅に更新した。感染者191万264人は、3月の219万7488人に次ぐ記録となった。
月間記録更新は全国の死者だけではなく、南東部4州と連邦直轄区など、19の連邦自治体が最悪の4月を過ごした。1~4月の死者が昨年の総計を超えた州は六つ増え、総計12となった。
ただし、死者数は減少傾向が続いており、2日現在の総数は40万7639人で、7日間の平均は2406人/日まで落ちた。
感染学上の第17週(4月25日~5月1日)の死者1万6945人は、前週比で4・9%減少。感染学上の第15週(4月11~17日)は前週比で3・8%減、第16週も12・4%と減少が続いている。
他方、外出規制緩和で人出が増え、感染者数や入院患者数が増え始めたのは要注意だ。感染者は感染学上第15週が7・4%減、第16週も10・3%減っていたが、第17週は41万7760人で2・4%増加している。
2日現在の感染者は1475万4910人、7日間の平均は5万9160人/日で、4月26日の5万6532人/日を上回る状態が続いている。
月間感染者数が過去最多となった連邦自治体は四つで、1~4月の計が昨年の総数を超えた州は三つ増え、5となった。
また、7日間の新規入院患者の平均が33日連続で減少し、1日からは外出規制も若干緩和されたサンパウロ州だが、4月28~30日の平均入院患者数が2216人、2241人、2252人と一転して増えており、専門家の間で懸念が生じている。
4月30日には、オズワルド・クルス財団(Fiocruz)に国内での有効成分(IFA)製造許可が出た。純国産ワクチン納品にはテストと新たな承認が必要で、本格生産・納品には半年程度かかる見込みだ。
4月30日には、Fiocruzが650万回分、ブタンタン研究所が42万回分のワクチンを納品。1~2日には世界保健機関傘下のCovaxファシリティからオックスフォード・ワクチン400万回分余りが到着した。4月29日到着のファイザー社製ワクチン100万回分を含むコロナワクチンは、3~4日に配布される。
ブラジルでの予防接種はワクチン不足などで頻繁に中断し、思うように進んでいないが、1千万回分を超えるワクチンの納品と配布で、接種が加速する事が期待される。
なお、パズエロ前保健相が2回目の接種用ワクチンを初回接種で使い切るよう指示した事で混乱が生じ、2回目の接種用のコロナバックが不足する州や市が続出し、州や市の保健局、保健省が苦慮している。
3日は7州の州都で2度目の接種が中断された他、サンパウロ州でも最低10市で接種中断などと報じられた。リオ市などは2度目の接種用の日程表を発表し直し、対応している。
保健省は新たに納品されたワクチンや配送センターに滞留していたコロナバックを急送したが、2度目の接種状況の完全把握やワクチン配布にはもう少し時間が必要となりそうだ。
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2日、象徴的な写真がネット上に出回り、かなりの話題を呼んだ。1日に撮影されたと思われる写真は、ブラジリアのバプテスト教会の前の橋を、この日行われたボルソナロ大統領の支持デモに参加した白人たちがマスクもつけずに意気揚々と歩き、橋の下では住む家もない黒人たちがただ座ってたたずんでいるだけ、というものだ。この写真は、フォロワー数が4千万人を超えるユーチューバーのフェリペ・ネットが、「今年最高の写真。これこそが今のブラジルの現実だ」とのコメント付きでツイートしたことで、一気に拡散された。昨年の今頃行われた、コロナ対策での外出自粛に反対した車両デモでも高級車が並び、批判を受けた。何かを学ぶべきでは。
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サンパウロ州での60〜62歳の人々へのコロナワクチンの接種は6日からと発表されているが、大サンパウロ都市圏の一部で日程の繰上げが起きている。サンカエターノ・ド・スル市では2日から、サンベルナルド・ド・カンポ市やジアデマ市では3日から接種が始まっている。ワクチンは1日も早く打ちたいと思っている人が多いので、これらの市に住む人にとっては朗報だ。もしかしたら6日までに他の地域の繰上げも発表されるかも。59歳以下の接種の発表にも期待したい
★2021年4月28日《ブラジル》ワクチン不足で2度目の接種中断も=深刻なコロナ禍の中、前保健大臣はマスクなしで買い物「どこでマスク買うの?」
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