マルコスのように、このブラジルしか知らない人にとっては、なかなか想像しにくいことかもしれないけど、国を移す、移民するということは、大きな世界が開けると同時に、後にして来た国から脱却する痛みというものが伴うの。それは表面的にはなかなか見えない分、重いものがあるけど、しかしそれは、移民にとって避けて通れない道でもあるわね。
後にしてきた国と、目前にある新世界と。その二つの狭間の中で起きていく葛藤は半端なものじゃないけど、それもまあ、移民が持つ宿命と呼べるものかもしれないわね。でもね、そこを突き抜けるとね、本当に面白いものが見えてくるわ。
私の場合は、その突き抜けた風景の中に、突然のようにしてマルコスが現れたわけ。
あ、これは余分なことで、話すことなんかじゃなかったわね、ハハハ、、、、」
平田アヤの告白は、ひとまずこの辺りで終止符を打つことにする。
クリスト レイ 約束の地 第三章 終