開発が進められる次世代エタノール
現代は、再生可能な資源が求められている。今日、水谷氏らが進めているプロジェクトの一つが、「次世代のエタノール」開発だ。次世代のエタノールとは、サトウキビのしぼりかすや藁などのセルロースから作られたエタノールだ。
ブラジル以外の国土が小さな国でも、エタノールは必要とされている。しかし、農地が少ない国では、現在のサトウキビのしぼり汁からのエタノールを生産するのは不可能である。
しかし、次世代のエタノールならセルロース、木片、米やトウモロコシの藁などが原料となるため、もっと広範に生産が可能となる。次世代のエタノールには大きな期待が寄せられている。
バイオガスの生産も一大プロジェクト
バイオガスも、コザンが取り組む大きなプロジェクトである。バイオガスとは、残留物などから生産された再生可能なガスで、生ごみなどの有機残留物をメタン生成菌等により嫌気性発酵(消化)して、バイオガスを得ることができる。
コザンの工場の場合、エタノールを1リットル生産する度に、10リットルの蒸留残さが残る。蒸留残さから作ったバイオガスからバイオメタンを作り、ディーゼルの代用とできる。
2015年にフランスで開催されたCOP21(気候変動枠組条約締約国会議)でのパリ条約により、再生可能な資源のプロジョクトが各国で推進された。今後はさらに重要視され、投資される分野である。再生エネルギーは健康にも良く、二酸化炭素排出量がより少ないため、地球温暖化も緩和させられる。
例えば、コザンは米国にエタノールを輸出しているが、特にカリフォルニア州では、より再生可能で持続可能であることを尊重して、コザンのエタノールが選ばれた。企業同士が取引する場合、社員への職場環境や自然環境に考慮した会社であるかを調べるため、その様なことも考慮に入れられ、コザンはカリフォリニアの企業に選ばれた。
日本は技術、ブラジルは資源が強み
多くの企業が2050年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いて「排出を全体としてゼロ」にすること)の実現を目指している。
自動車産業では、日本は電気自動車の一タイプである水素燃料自動車の開発に力を入れている。トヨタのMIRAIなどだ。水素は将来の車の燃料であり、天然ガスや炭、そしてエタノールからも取り出すことができる。コザンも、例えばエタノールの方が天然ガスよりも水素を作るのに適しているかなど、水素エネルギーの研究に力を入れている。
ブラジルでも現在、ガソリン自動車と電気自動車が共存する。電気自動車のハイブリッド車(ガソリンエンジンを使って発電し、その電気をバッテリーに貯めてモーターを動かす)では、トヨタのプリウスなどがある。
日本ではモーター開発が進んでいるが、ブラジルには再生可能な資源がある。そして、ブラジルは国土が広く、農地も広い。エタノール生産には、ブラジル全土の1・5%しか使用していない。ブラジルの農業で使用される土地の3%以下である。
好きなだけサトウキビを植えることもできる。他国のように、「食糧をとるかエネルギーを取るか」という議論は起こらない。日本では「バイオエタノールを生産したくない。なぜなら自分たちの食糧を奪うことになる」と、議論が交わされてしまう。(大浦智子、つづく)