下院が4日、軍政時代に制定された国家治安維持法(Lei de Segurança Nacional)を廃止する法案を承認した。同法案は今後、上院に回される。4、5日付現地紙、サイトが報じている。
治安維持法は軍事政権が終わる2年前の1983年に制定された。今回の法案審議で報告官をつとめたマルガレッテ・コエーリョ下議(進歩党・PP)によると、同法は「軍政時代の最後の遺物」で、現状に即さないと捉える向きが少なくなかった。
同法を廃止しようとする動きは、ボルソナロ政権がここ数カ月間、同法を根拠に、ボルソナロ大統領を「ジェノシダ(大量殺戮者)」と呼んで批判した人物を逮捕したり、ネット上で批判を繰り返す大学教授やユーチューバー、政治家を連警に捜査させようとしたことを問題視する声が高まったことを契機にはじまった。
加えて、2月にボルソナロ大統領派のダニエル・シルヴェイラ下議が「最高裁判事全員を更迭せよ」などと叫び、反民主的行動を煽る動画を流した際、最高裁が治安維持法を適用して逮捕を命じたことへの当てつけだとも見られている。
今回の法案では、刑法にある「民主主義体制に対する危険行為」の内容として「フェイクニュースの拡散」や「暴力を助長する言動」などの10項目を付け加えた上で、国家治安維持法自体は廃案にする提案をし、承認された。連邦政府側は同法案の取り下げを求めたが、62対338で却下された。